壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

最後の陪審員(上・下) ジョン・グリシャム

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最後の陪審員(上・下) ジョン・グリシャム
新潮文庫 2007年 各700円

もらい物の未読本を探してきました。リーガル・サスペンスなのかと思って読み始めましたがその要素は少なくて、楽しく読み終わりました。

大学を出たばかり23歳のジャーナリスト志望のウィリーは、破産しかけた地方新聞のオーナー編集人となる。ミシシッピー州の田舎町ではめったにお目にかかれない凶悪事件(レイプ殺人)が起きた。犯人は、悪名高い有力者パジット家の一員ダニー。陪審員評決の結果有罪となるも、おおかたの予想に反して死刑にはならなかった。9年の後ダニーは仮釈放され、当時の陪審員が次々に狙われる。ダニーは再度拘留されるが、なんと皆の目の前で狙撃された。

小説の主題はサスペンスよりも、1970年代のディープサウスの社会情勢にあるようです。陪審員として選ばれた黒人女性カリアを通して描かれる差別の実態。ウィリーの教会訪問の記事から読み取れるバイブルベルトと呼ばれるディープサウスの宗教状況。しかしそれ以上に、その時代のミシシッピーの田舎町へのノスタルジーが色濃く描かれています。

また新米のジャーナリストのウィリーが社会経験を積んで成長していく姿、友人となった黒人女性カリアとの心温まる交流などが好意的に描かれて、一種の成長物語にもなっています。祖母に借りた金で買い取った新聞社を10年の後に非常な高額で売却するというアメリカンドリームも、エンターテインメントを盛り上げ、軽い仕上がりです。

リーガル・サスペンスでありながら、1960年代へのノスタルジーを扱ったスコット・トゥローの「われらが父たちの掟」を思い出しました。純文学風のかなり重い作品で、あれもよかったなあ。このごろずっと図書館に行けないので、エンタメ本ばかりになってしまい多少不満足です。

足のギプスがやっと取れて、近場なら自動車の運転は出来そうです。リハビリして早く図書館に行きたい!!