壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

なつかしく謎めいて

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なつかしく謎めいて アシュラ K ル グィン
谷垣暁美 訳 河出書房新社 2005年 1600円

原題はChanging Planesで空港での飛行機乗り換えと次元をかけたもので、次元間旅行で訪れたさまざまな世界の話。典型的なSFであっさりと読めてしまうのですが、そこにはル グィン流の思索のある読み応えの充分の話が詰まっています。挿絵はエリック・ベドウズEric Beddows
http://www.ursulakleguin.com/EricBeddows/index.html
ここで挿絵が見られます。

本の題名も、章の題名もちょっと意訳しすぎなのもあります。
玉蜀黍の髪の女 Porridge on Islac イズラックは、遺伝子工学で作られたキメラの世界。99.44%以上がヒトゲノムである人間だけが公職につけ、玉蜀黍のような髪は4%の玉蜀黍ゲノムの混入だった。

アソヌの沈黙The Wisdom of the Asonu アソヌたちは、成長するにしたがってほとんどしゃべらなくなる。どのように関係を築いているのか、他者にはわからない

その人たちもここにいるQuestioning the Hennebetヘネベット人の姿かたちは、驚くほど私に似ているのに、本質を全く理解できない。

ヴェクシの怒り The Angry Veksiヴェクシの社会は怒りで構成されている。

渡りをする人々 Seasons of the Ansarac嘴をもつアンサラックたちは、1年(地球の24年)に1度、北へ渡りをする。

夜を通る道 Social dreaming of the Frin フリンシア次元では、周りにいる人や生き物たちの夢が混ざり合って、誰もが共同夢を見る。

ヘーニャの王族たち The royals of Hegnヘーニャでは、ほとんどが王族で、20人ほどの平民の、下層階級の暮らしぶり対する関心は高い。

四つの悲惨な物語 Tales of Blood from Mahigulマハグルは今では平和なところだが、血なまぐさい歴史を持っている。

グレート・ジョイGreat Joy グレート・ジョイ社の経営する観光の島々はホリデー次元にある。クリスマス島イースター島独立記念日島などの島の住民は、グレート・ジョイ社により不当に扱われている。

眠らない島Wake Island オーリチ次元で、ハイブリサル国の科学者は、眠らなければ人間は天才になれるという仮説に基づき、遺伝子プログラムで眠らない天才ベビーを作った。

海星のような言語 The Nna Mmoy Language ンナモイの言語は、単語同士が、海星のような放射状の関係を持つので、翻訳機で翻訳できない。さらに単語自身の意味が、不確定。「日本語では、単語にささやかな変化が付け加えられると、文全体の意味がすっかり変る」というが、作者の東洋の言語に対するイメージなのか。それよりも面白いのは、ンナモイの生態系が非常に単純で、人間に有用な最低限の生物のみから構成されていること。貧弱な生物相は古代文明の痕跡らしい。

謎の建築物 The Building コク次元には、ダコとアクの二種の知的生物がいる。アクは、巡礼の儀式のように、石造りの巨大な建造物を数千年も作り続ける。

翼人間の選択 The Gyran Hatred of Wings ガイの人たちは羽毛をもつが、思春期に、翼が生えてくる事がある。千人に一人くらいの発達の異常らしく、鳥人間は空を飛べるのに、幸福では無い。

不死の人の島 The Island of the Immortals イェンディ次元で見た悲惨な様子の不死の人。確かにただの不死であれば、そういうこと。

しっちゃかめっちゃか Confusion in U-i ウニ次元で味わったヴァーチャルリアリティーのような、捻じ曲がった空間での体験。