みすず書房 図書館本
月二回の移動図書館の日を何よりの楽しみにしている高齢者には、耳の痛い副題です。
著者の宮田氏は編集者・翻訳権エージェントとして長く働いていた方です。出版界の裏表の事情と、リタイア後に楽しみのために図書館に通うようになった様子を絡めた面白いエッセイでした。著作権、翻訳権、貸与権の問題、書籍販売の流通の問題など、体験談として語られています。猥褻書籍の発禁処分の昔話も面白く読みました。
2013年出版の本書ですが、「老齢期の読書」—著者は執筆当時80代半ば—という視点は、思い当たる節がたくさんありました。蔵書整理したので、単行本は買わずに図書館で借り、買うのは文庫本、古い本は字が小さくて読めない等々。
「公立無料貸本屋」の伸びが出版社の売り上げを阻害しているわけではない事、図書館法に「・・・一般公衆の…レクリエーション等に資することを目的と・・・」と娯楽としての読書に言及している事などを知り、恥じることなく図書館を利用しようと思いました。
月二回、近所のお寺の駐車場に移動図書館の車がやってくる時間になると、私も含めて高齢者が十人くらい集まってきます。カートを引いて歩いてくる人、カブに乗ってくる人、毎回文庫本を沢山借りていく人、もう一度借りたいと何回も同じ本を借りる人、ネットで予約しておいた本を受け取る私、いろいろです。
『グレゴワールと老書店主』という老人ホームで本を読んでもらう話を思い出しました。近ごろはオーディオブックにも魅力を感じるようになりました。自分のペースで文字を追う方がいいのですが、老眼がすすんで目が疲れて夜の読書が少し苦痛です。上手な朗読を聴きながら寝入るのもまた快適です。いつかそのうち、本を読んでもらいながら永眠したい(笑)。