壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

ナウシカ考  赤坂憲雄

ナウシカ考  風の谷の黙示録 赤坂憲雄

岩波書店  図書館本

ナウシカ考』という「ナウシカ愛」がたっぷり詰まっていた。歌舞伎『風の谷のナウシカ』が上演されたころだったか、民俗学者の赤坂氏の力作として本書も評判になっていたのは覚えている。思い立って読み始めたが、手強かった。マンガ版『風の谷のナウシカ』を読み直してから20年近く経つのでだいぶ忘れていたが、捨てずに書棚の奥にしまってある全七巻のマンガは読み返さずにおいた。

マンガを読み直さなくてもいいくらいに内容も詳しく説明されていたが、マンガ自体が難解だし、本書も民俗学者としての『ナウシカ』の研究書であるのでさらに難解な部分が多い。読むのに一週間もかかり、図書館の返却期限が迫っている。

とにかく、ナウシカを読み込んでいく精度がものすごく高い。マンガの読み手が、作品に対する愛だけでなく、高い教養と古今東西の幅広い知識を持っていると、こんなに深い読みが出来るのかと思う。原作以上に掘り下げていても、その評論に耐える作品(マンガ)であることも再認識した。

わたしには内容を要約する能力はない。反黙示文学であるとか、二元論を否定しているとか、分からないでもないが、ナウシカの「敵とか味方とかを区別すると、すべてを焼き尽くすことになる」という言葉が一番わかりやすいかもしれない。

マンガの終幕をどう解釈したものか、手に余るものを感じていた。いつかそのうち、マンガを再読して、自分の言葉で考えることができればいいなと思う。