グレゴワールと老書店主 マルク・ロジェ
東京創元社 海外文学セレクション 図書館本
18歳のグレゴワールは老人ホームで働き始めた。元書店主のムッシュー・ピキエは,ホームの自室に3000冊の本を持っているが,体も目も不自由になってグレゴワールに朗読を頼んだ。今まで本に興味のなかったグレゴワールがピキエの勧めに従っていろいろな本を読んでいくうちに世界が開け,最後にはピキエの頼みで一人巡礼の旅にでる。
本を読むことが,人の成長にどんなに大事かを教えてくれる本です。でも堅苦しいことはなく,フランス文化らしい軽くて笑いのある語り口です。ダイ・シージエの『バルザックと小さな中国のお針子』を思い出しました。こちらは西洋の本がすべて禁書になっていた文革時代の不自由な読書ですが,自由な世界であったとしても,子供たちが本を読むには,それなりの環境やきっかけがなければならないと思います。
2人の信頼関係が深まり友情が生まれてくると同時に,グレゴワールは読書を通じて外の世界を知り積極的になっていくが,ピキエ老人は反対に少しずつ衰えていく。その衰えを知る老人は。焦る気持ちがあるのでしょうね,グレゴワールに本と朗読の意味を伝えたくて,彼に運河で泳ぐという無理なトレーニングまでやらせる。
♪朗読って,結構,体力が必要らしいです。ドリアン助川の『朗読ダイエット』には,10ヶ月で46キロの減量に成功した例があり,岩波版のモーパッサンをすべて読破(朗読)したそうです。立って行う朗読は全身運動らしい。『朗読ダイエット』は私の場合は,残念ながら本を読んだだけになりました。
退屈な老人ホームでの朗読会は大人気となって老人たちを楽しませた。中学の音楽の先生だったマダム・モレルは,グレゴワールの朗読を聞きながら臨終の時を迎えたいという希望をかなえた。グレゴワールが読んだのは『海の上のピアニスト』(アレッサンドロ・バリッコ)。
♪私も高齢者になって読書がしんどい時があります。昔の文庫本は字が小さくてもう読めません。電子書籍は好きではないけれど,字が大きいので助かります。そしてだいたいの電子書籍はALEXAが読んでくれます。読みは下手だし訳の分からない誤読が多いけれど,入眠困難を解消してくれるのがALEXAです。本を読んでもらうとなぜかすぐに眠くなって寝てしまい,夜中や朝までずっと読み続けてくれるので,不思議と安眠できます。ただ私は,本の内容を耳からはあまり理解できない活字中毒なので,もう一度,目で読み返します。臨終の時もALEXAにお願いしよう。もっと上手になっていてね。目次のこと「めつぎ」と読まないように!
ムッシュ―・ピキエの自室には3000冊の本がある。はじめは青少年向きの本からだんだん大人向きの本になって,さらに禁書。それをトイレの下水管を使って夜中にこっそり朗読会をする。
♪60平米の広さの自室だというから,3000冊の本も収まるのでしょうね。日本の一般的な老人ホームだと20平米以下ではないでしょうか。…というようないずれどこかの施設に入る者としてはそんなことが気になります。(Kindle持っているので,ヨシ!)それにトイレの封水を無くしたらものすごい悪臭だし…。この本に出てくる本は,フランスの文学が多くて読んだ事がありません。書名を少し拾い出しておきましょう。悪臭と共に読まれた禁書はどれだ?
モーパッサン 短編「装い」「トワーヌ」「ペロム師の獣」「売りもの」「メゾン・テリエ」「脂肪の塊」
『あおい犬』 ナジャ
『うんちっち』 ステファニー・ブレイク
『怪物の口の中』 コレット・バルベ ジャン=リュック・ベナゼ
『マーティン・イーデン』 ジャック・ロンドン
『父の大手柄』『母のお屋敷』『秘めごとの季節』『恋する時』マルセル・パニョル 少年時代
『徒刑場を訪ねて』ヴィクトル・ユゴー
『水と夢』ガストン バシュラール
『夜の果てへの旅』 セリーヌ
『紙の女』フランソワーズ・レイ
『イレーヌのコン』ルイ・アラゴン
『一万一千本の鞭』 ギョーム・アポリネール
『聖餐城』ベルナール・ノエル
『マリー・クレールのアトリエ』マルグリット・オードゥ
『14年の人々』モーリス・ジュヌヴォワ
『薔薇の奇跡』ジャン・ジュネ
『七王国の玉座』ジョージ・R・R・マーティン →「氷と炎の歌」→Game of Thrones !!
『二十の愛の歌と一つの絶望の歌』パブロ・ネルーダ
『第4の書』フランソワ・ラブレー