方丈記 鴨 長明 蜂飼 耳 訳 光文社古典新訳文庫 Kindle Unlimited
漫画方丈記 鴨 長明 (著), 信吉 (イラスト) 文響社 Kindle Unlimited
読み放題だった二冊。
古典文学の三大随筆は『枕草子』『徒然草』『方丈記』だそうだ。清水義範著『身もフタもない日本文学史』の中に
“日本人がエッセイを書く時、女は清少納言に、男は兼好になる。「枕草子」のように自らのセンスを誇り、「徒然草」のように世の中を叱って己を自慢するのだ。”
というキャッチ―な紹介文があったのを思い出した。
それに倣えば、
シングル高齢者がBlog/Vlogをするとき、皆、鴨長明になる。終活で身辺整理してミニマリストを目指しつつも、悟りきれない己を叱るのだ。
と言えないだろうか。方丈の庵の描写はVlogのルームツアーの様だった(笑)。
古文を読むのは高校生以来の半世紀ぶりだから、まずは漫画を読んでみた。マンガといっても原文の現代語訳に簡素なイラストが付いているだけで、余計なものをあまり足していないのでとても読みやすかった。鴨長明が棲んだ庵の間取りが参考になった。
漫画だけでは物足りなくて、文庫も読んだ。蜂飼さんの現代語訳も解説もわかりやすかった。
内容を頭に入れてから、最後に文庫にある原文(読みやすくリライトしてある)を朗読してみたところ、気持ちの良いくらいの名文だった。和歌や漢詩のように品があって、テーマが簡潔に絞られている、声に出して読みたい日本語。
地震や大火など災害の頻発した時代に、和歌や音曲の名手でありながら不遇だった鴨長明が、60歳近くになって山中の方丈の庵を建て、そこに一人住んでいた数年間の思いが書かれている。人の世の儚さを感じて、俗世から離れて、読経と和歌と音楽を楽しみ、自足した時間を過ごしている。でも行間には俗世への未練が見え隠れしている。悟りきれない己もまた、やむなしという事だろう。
高齢シングルとして、大変参考になりました。鴨長明は62歳で亡くなっているとのこと。800年前、平安‐鎌倉時代の人々の寿命から見ると、それなりに長寿だったのでしょう。どんなふうに亡くなったのかな。