壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

火星ダーク・バラード  上田早夕里

火星ダーク・バラード  上田早夕里

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【火星】をテーマに読むマイブームの復活です。バローズブラウンクラークと古いSFを読んできたので、四冊目は日本の女性作家の作品です。初読みの作家さん、上田早夕里という名前はなんとなく知っていたけれど、今まで読もうとは思いませんでした。歳をとると、自分の読書範囲を自身で限定しがちで、読書に広がりがなくなっています。でも本書は、電子化され安くなっていて、これは読むしかないと、はじめはそっちの方の動機でした。

読み始めてすぐに、引き込まれました。クラシックな風味のハードSF、ミステリ、ハードボイルド、アクション、ダークファンタジー、ラブストーリーと盛りだくさんです。さらに硬質で明確な筆致が好きだなあ。エンターテインメントとして充分に面白く、2日で読んでしまいました。

火星の赤道に沿って延びるマリネリス峡谷は長さ4000キロメートル、深さ7キロメートルの深い谷。火星に進出した人類は、それをすっぽり覆うように天蓋を被せて都市化した。その中で秘密裡に研究されている、遺伝子操作による人類の人工進化計画プログレッシヴ。その計画の中で生まれた少女・アデリーンは、自分の中に潜在するとてつもない超能力を持て余していた。一方、犯人を取り逃がしたうえで相棒の殺人容疑をかけられた火星の捜査官・水島は、身の潔白を示すために、個人的に捜査を始める。その二人が出会って…

2003年に小松左京賞受賞作品で、のちに改稿されたようです(2003年にiPS細胞はまだできてになってなかったような…。それでも20年前にこんなSFが書かれていたなんて)。

火星生まれの少女といえば、萩尾望都の『スター・レッド』。これは、1978~1979年に書かれたもの。つい懐古的になってしまいます。コミック文庫版は捨てないで置いてある本の一冊なので、再読しようかな。でももっと読みたい上田早夕里さん! いくつかシリーズがあるようです。

どっちにしようか、迷うのも楽しい。