壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

火星のプリンセス  エドガー・ライス・バローズ

火星のプリンセス  エドガー・ライス・バローズ

厚木淳 訳 創元SF文庫 電子書籍

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100年以上も前に書かれたスペース・オペラの原点といわれるSF小説です。初版が1917年ですが,日本で翻訳出版されたのは1965年でした。その時中学生だった私はこのシリーズの文庫本を持っていました。SF大好きで,チープな感じのスペース・オペラも大好きでした。ヒーローとヒロインのジョン・カーターとデジャー・ソリスの名前ははっきり覚えていますがシリーズ11巻を全部読んではいないと思います。

著作権の関係でしょうか,近ごろは電子化された古い小説をたくさん見かけるようになり,懐かしくて読み返したくなりました。『火星のプリンセス』は『ジョン・カーター』として10年ほど前にディズニーで映画化されているので,映画を見るついでに小説も読み直してみました。

原作ではSF的要素はそれほど強調されておらず,騎士道的冒険物語が主眼ですが,ずっと後に続くスぺオペ(スペースオペラ)の原点であることは明らかです。CGが使われ出したSF映画にもバローズの描く世界観が形を変えて受け継がれています。映画『ジョン・カーター』は現代的な解釈が盛り込まれてはいますが,原作の雰囲気がよく伝わってきます。原作『火星のプリンセス』の存在を知らないと,スぺオペの頂点である『スターウォーズ』やそれ以外のSF映画に出てきたシーンの焼き直しのように見えます。そのせいでしょうか,映画はあまりヒットしなかったそうですが,本当は『火星のプリンセス』が先なんです。

映画が先行作品の焼き直しだと強く感じたのが,移動都市ゾダンガの部分です。原作に出てこない移動都市はプリーストリーヴのものです。また原作と映画で決定的に違うのは,映画がスチームパンクっぽい所。そしてジョン・カーターが地球と火星を瞬間移動する理由とデジャー・ソリスのキャラクターです。原作では瞬間移動はなんの理由もなく突然起きるので荒唐無稽な感じですが,映画では介在者があって世界観が大きく異なります。デジャー・ソリスは映画の方がずっと強くて自立した女性になっています。映画は続編を予感する終わり方になっていますが,採算がとれなかったらしいから,続編はできないのかなあ,残念です。

火星の○○○というSFは他にもたくさんあります。それも読んでみたいと思いながら,視力の衰えを感じる毎日です。