壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

うめ婆行状記  宇江佐 真理

うめ婆行状記  宇江佐 真理

朝日文庫   電子書籍

大店の商家から武家に嫁いだうめは、義両親をみとり、夫を亡くして子供たちが独立した後、48歳で長男の住む八丁堀の屋敷を出て、独り暮らしを始めた。江戸の時代は不明だが、当時のアラフィフはもう老境になるのだろう。武家の窮屈な暮らしから、1人の自由な暮らしを楽しむはずだった。しかし、親戚縁者との関係は断ち切れない。実家の甥の隠し子騒動で一肌脱ぎ、義理の関係の姉妹とも関係を回復し、隣近所や友人とも交わり、自分の体調を取り戻したところで、【未完】となった。新聞連載中の作者の逝去という事実に、胸ふたがる思いだった。

宇江佐作品を読み始めて、二冊目で遺作を読んでしまった事を少し後悔しました。巻末の諸田玲子さんの解説に、宇江佐さんは六十代半ばで御自分の癌を知った後に、この新聞連載を引き受けた、とありました。「やむにやまれぬ何かがあったのだろう、と」。

夫が亡くなったのも六十代半ばでした。心残りがあったのだろうと、いろいろ思い出してしまいました。

気分をかえるのに、どこか旅をしたい。 そうだ火星、行こう