壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

六月の雪  乃南アサ

六月の雪  乃南アサ

文春文庫  電子書籍

自転車泥棒』で台湾の歴史を知りたくなりました。台湾を舞台にした日本の小説はいくつもあるようですが、まずは本書から。初読みの作家、乃南アサです。

声優への夢を諦めて派遣として働く32歳の未來は、同居の祖母の入院をきっかけに、祖母の生まれ故郷の台湾にそのルーツを探しに出かける。

32歳にしては少し幼い感じのする未來ちゃんに同行して、七日間、初めての台湾旅行をしてきたような読後感です。台湾南部の台南付近の観光地、風景や食べ物を堪能しました。そして、台湾の歴史についてほとんど知らない状態で旅行する未來ちゃんと一緒に、台湾の歴史を少し学ぶことが出来ました。台湾で出会った人たちとも最後には打ち解けることができ、未來ちゃんは前に向かって進む心の準備が出来たようです。

読んでいて、台湾の女性の家族の問題、未來ちゃんの家族親族の問題が冗長に思えたのですが、これは切ろうと思っても切り捨てられない過去を超えて、未来に向いて進んでいこうとすることの象徴なのでしょう。哀しいこともあって、つい涙しましたが、全体としては爽やかでソフトな印象でした。

台湾には行ったことがありません。これから先も行けないとおもいますが、これを読んで満足しました。「読書は旅」です。

台湾の歴史を知るには、小説だけでは物足りないので別の本も読もうかと思います。