壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

台湾 四百年の歴史と展望  伊藤潔

台湾 四百年の歴史と展望  伊藤潔

中公新書  電子書籍

台湾関連の小説を読んで、その歴史を知りたくて選んだのが本書でした。1993年に書かれた本だと気が付いたのが読み始めてからでしたが、最近の30年の歴史はリアルタイムでなんとなく知っているので、よしとしました。

筆者は日本統治下の台湾で1932年に生まれ、中華民国国籍ののちに日本に帰化した人です(2006年没)。情報としては古いですが、歴史の見方としてはニュートラルな感じを持ちました。日本の植民地政策についてもきちんと書いてあります。

“国民党政権の統治下で16年間にわたり教育を受けた私は、日本に留学するまでついに台湾の歴史を学ぶことはなかった。国民党政権が「台湾人が台湾の歴史を知ることを歓ばなかった」からである。台湾人に台湾の歴史を学ぶことが許されたのは、民主化が進展するなかの最近のことである。”(1993年に書かれたあとがきより)

大航海時代にオランダに支配されて以来、鄭成功の政権、清国、日本、国民党政権といずれも「外来政権」に 支配されてきた台湾の歴史の複雑さに驚きます。“台湾の歴史は、いわば「外来政権」による抑圧と住民の抵抗の歴史である。”という筆者の言葉が重く響きました。

今の台湾は、民主化も進み経済的には工業大国となりましたが、常に隣国の中華人民共和国の武力をちらつかせた威圧にさらされています。もしウクライナでロシアによる「武力による現状変更」を許したなら、中国もまた同じことをするのではないか?と思うのは私だけではないでしょう。

 

【台湾】に長居をしました。そろそろいったん帰国して(笑)、次は地球外生命体に会いに行くか、それとも19世紀の英国に行くか……どうしようかな。