壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

セカンドライフ  新津きよみ

セカンドライフ  新津きよみ

徳間文庫  電子書籍

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「定年」というキーワードで括られる,7つの短編です。初めての作家なのですが,読みやすい話ばかりです。老後とかシニアとか,こういうたぐいのキーワードが気になる年頃ですので,こういうような話はネットでたくさん読んだ事があり,取り立てて珍しくはありません。でも最後に一ひねりされて,思いもかけない結末になっているものもあります。「見知らぬ乗客」「演じる人」「誤算」「セカンドライフ」の4編は男性にはかなり辛口ですね。半額セールで,夜間についポチリました。就寝前読書のための電子書籍で,うまく眠れてラッキーでした。

 

見知らぬ乗客 定年後の夫がうっとうしくなって殺人を依頼した妻が認知症になり…,二転三転して23年後に…。

演じる人 定年後に撮影のエキストラで頼まれたチョイ役が名演技と評されてその気になり,実生活で刑事を演じて怪我をした男性。老齢の母の思い違いをそのまま演じる娘と,娘の優しさを受け止めて認知症を演じている母。

誤算 順調に出世して定年を迎え万事計算通りと自負する男性。ところが再雇用の屈辱に耐えかねて退職,長男は休職,長女は離婚して出戻り,妻は介護で実家に戻り楽しくやっている。夫と妻では老後にやりたいことが全く違う。妻は解放されたいのだ。

セカンドライフ 定年後に夫の希望で田舎に移り住んだ夫婦が熟年離婚した。自分勝手な夫から離婚を切り出されたのだが,原因は隣家の色っぽいシングル女性なのかもしれない。価値観の違う夫より,女友達とのほうが居心地がいい。

三十一文字 定年間近のバツイチ男性と結婚したアラフィフ女性は仕事を辞めた。前妻が新聞に投稿する短歌が気になり自分をうしなったような気がする。

雲の上の人 父親の経営する蕎麦屋で働く女性は,仕事を辞め恋人と別れてこの地に帰ってきた。年子の妹はCAだが地上勤務に配置換えされ休暇で戻ってきた。休暇中に出席を命じられたイベントに行きたくない妹の代わりに姉が出席し…。年子だけど双子というひねりの後に,「いい話」。

定年つながり 男性は車を運転中に,自転車の女子高生に接触したが,「大丈夫」と女の子は去っていった。男性は「四日後に必ず連絡するから」という。なぜ四日なのか。「献血定年」「骨髄ドナー定年」という年齢制限を織り込んだ「いい話」。