たまさか人形堂物語 津原泰水
文春文庫 電子書籍
リストラされたOL澪が祖父の潰れそうな人形屋を引き継いで,人形オタクの青年と凄腕の人形師の2人の店員といっしょに,販売よりも修理を看板にしている「玉阪人形堂」。「ほのぼのミステリー」と思ったら,大違い。6編の連作短編はどれも雰囲気の異なる工夫がなされていて,さすが『11』を書いた著者です。
持ち主にうり二つの大型人形を持ち込んだ若い女性とお気に入りのぬいぐるみを持ち込む少年の「毀す理由」は心理ミステリー。アルバイト店員の富永くんが持ち込んだラブドールが引き起こす「恋は恋」の人間関係(人形関係?)。遠縁の女性に誘われて雛祭りの人形を見に行った「村上迷想」は正統派のミステリー。店員で謎の人形師師村さんが語るチェコの人形師の「最終公演」はスティーヴン・ミルハウザーを思わせる幻想小説風。ラブドールの製作者束前さんが明かす師村さんの過去は人形浄瑠璃の「ガブ」にまつわる。人形堂の廃業を決心して店舗を売却した澪が自動車にはねられ病院で見た夢の続きは「スリーピング・ビューティ」。
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