壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

マイナス・ゼロ 広瀬正

火曜日の夕方に静岡に戻り、木曜日の朝にまた上京。こんな生活、疲れる・・・・。電車に乗る時間が長いので、読書は思いのほか捗るけれど・・・。出先の古本屋で、こんな古いSFを見つけた。最近復刊されたらしい。
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マイナス・ゼロ 広瀬正
集英社文庫 改訂2008年 800円

昭和20年の東京、空襲のさなか、俊夫少年は瀕死の隣人から「18年後の今日、ここに来てほしい」と頼まれた。昭和38年、約束の場所で出会ったのはタイムマシンと一人の女性、伊沢啓子。

各章は、「プラス・ゼロ」「プラス18」「マイナス31」「ゼロ」「マイナス・ゼロ」。「マイナス31」では、誤って昭和7年に戻ってしまった俊夫が、昭和7年生まれの自分と同時に存在するという状況になる。過去に忘れてきたライターのくだりなど、タイムパラドックスを意識していないわけではないが、しち面倒くさい時間理論には踏み込まない。 カシラ一家のおおらかさに救われ、苦学している自分のために匿名の援助を行ったりと、ノスタルジックな昭和の東京の風俗がいい雰囲気で描かれている。

昭和38年、還暦を過ぎた俊夫(中河原伝蔵)が32歳の自分と遭遇する場面はなかなか面白いが、最後に、もっともっと複雑な事実が判明して、驚かされる。っていうか、すぐには理解できなくて、考え込んでしまった。終わりよければすべて良し、っていう楽天的な結末はいいなあ。