壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

暗夜 残雪

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暗夜 残雪
近藤直子訳 河出書房新社 世界文学全集I-06 2008年 2800円

「廊下に植えた林檎の木」「黄泥街」と読んできた残雪です。心惹かれるのですが、わけがわからないうちに読み終えてしまい戸惑います。

七編の短編中、後半の翻訳が単行本初収録だということ。初期のものから最近作まで並んでいるのですが、いくら読んでも判る気がしない。残雪は「突囲表演」を読んだら、ちょっとお休みにしましょう。

阿梅、ある太陽の日の愁い(1986) <<『カッコウが鳴くあの一瞬』
黄泥街のような日常。私たちにとって不思議なことであっても、阿梅にとっては日常なのだ。訳者の詳しい解説の論理を理解できなかった。

わたしのあの世界でのこと―友へ (1986)<<『蒼老たる浮雲
たった7ページで、とらえどころがない。「わたし」は誰なんだ、いや何なんだ?

帰り道(1993)<<『廊下に植えた林檎の木』
再読したがやはり分らない。広大な草地の果てに建つ家は、暗闇の中では断崖の端に位置する。不思議なのに寓意を拒否する、エッシャーの絵を言葉にしたような気がした。

(1994)
むしろを編んで暮らす痕(ヘン)は、買い付け人と契約するが、買い付け人の運んでいったむしろは山の中に打ち捨てられている。村人たちから疎まれながら監視されている理由は一切明かされない。

不思議な木の家(1998)
上部が霧に隠れて見えないほど背の高い木の家を昇り、最上階に住むあるじをたずねる。「帰り道」の家のように帰れなくなるのかと思った。

世外の桃源(1999)
村の古い伝説の中にある「世外の桃源」。萕四爺が語る山の上のブランコ。そこがなんなのか最後までわからない。

暗夜(2006)
敏菊少年は萕四爺とともに猿山に向かう。その途中の暗闇は地獄のようでもある。結局行き着くことのできない猿山とは何だろう。

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