壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

グラント船長の子供たち(上・下) ジュール・ヴェルヌ

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グラント船長の子供たち(上・下) ジュール・ヴェルヌ
大久保和郎訳 ブッキング 2004年 各2500円

 

急に暑くなりボーッとしているせいか、読んだ本を記録するのが億劫です。でも本の内容を忘れる前に記録しておかないと、図書館に返却すればもう何も思い出せなくなりますから。ボケ防止のためのブログ更新です。

 

1977年に旺文社文庫より刊行されたものの復刊だそうです。中高生の頃、いわゆる名作の多くを旺文社文庫で読んだ覚えがあります。いつの間にかこの文庫は廃刊になりました。薄いグリーンの表紙で箱に入っていたのが懐かしいですが、すべて手放してしまって残念です。こんな表紙でした。若い人はもう見たことがないでしょうね。
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『神秘の島』 (1875)にこの「グラント船長の子供たち」(1968)の冒険の後日談が書かれていたので安心して長い長い世界一周を楽しむことができました。この冒険は南緯37度というのがキーワードですので、世界地図も載せておきます。南緯37度が横切る陸地は南アメリカ、インド洋の島、オーストラリア、ニュージーランドそしてグラント船長がいた太平洋の絶海の孤島タボル島。ネタバレついでに要約までしてみました。
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『第一部』
スコットランドの貴族エドワード・グレナヴァンは鮫の胃袋に飲み込まれていた瓶の中の手紙を発見しました。その手紙からようやく読み取ることができたのは、冒険家グラント船長の船「ブリタニア」が遭難して、船長と水夫二人が南緯37度11分でこの瓶を投入したことだけでした。グラント船長の子供たち、メァリとロバートを連れて、グレナヴァンは快速船「ダンカン」でグラント船長の捜索にのりだします。

 

同行するのは、グレナヴァンの妻へレナ、「ダンカン」の船長ジョン・マングルズ、老練な航海士オースティン、グレナヴァンの従兄弟マクナブズ少佐、まちがって乗船した地理学者ジャック・パガネルたち。まずは「パタゴニア」という文字をかすれた手紙から読み取って、南アメリカはチリの西岸からアンデス山脈を越えてパンパを渡るという大冒険に出かけます。

 

ただひたすらに南緯37度線をたどり続け、原住民に捕らわれているらしいグラント船長を探すという無謀ともいえる旅ですが、地理学者パガネルの好奇心旺盛な天衣無縫ぶりによって旅の楽しさが満喫できます。アンデスでは地震にあって大岩にのって二千メートルも滑落し、さらにそのあとロバート少年はコンドルに攫われ、また洪水にあって大木の上で暮らし、ワニに追いかけられるという波瀾万丈。でもアルゼンチンの内乱によって原住民はこの土地にはいないことが判明し、グラント船長の捜索は失敗に終わりました。

 

『第二部』
気を取り直して謎の手紙を解読すると、今度はオーストラリアらしいことが判明します。でも念のため37度線にあるインド洋の孤島、「トリスタン・ダ・クーニャ」と「アムステルダム島」も探検します。その歴史、地形、動植物などの薀蓄を地理学者パガネルが滔々と語るので、旅行案内書のようです。さらにインド洋で暴風に巻き込まれ、南オーストラリア沿岸で故障した「ダンカン号」を修理する間に、内陸部の探索が行われました。

 

今回の旅は女性二人が同行するので、牛車を仕立てた優雅な旅で始まりましたが、途中エアトン(「神秘の島」に出てくる元海賊)が加わり不穏な雰囲気です。オーストラリアの原住民は穏やかでヨーロッパ人を拉致監禁しているという可能性は低いというので、グラント船長の探索も望み薄です。さらに、エアトンと逃亡囚人仲間の「ダンカン号」を奪うという策略に陥って、一同は内陸部に置き去りにされやっとのことで海岸にたどり着きましたが、ダンカン号の姿は見えませんでした。

 

『第三部』
万策尽きて、いったん英国に引き上げようとした一行は船便を求めてニュージーランドに向かいます。貨物船に同乗した一行は、途中で嵐にあい船は座礁して船員たちはボートで逃げ出し置き去りにされます。筏を組んで上陸し、徒歩でなんとかオークランドまで行こうとします。しかしニュージーランドマオリ人は有名な人食い人種でヨーロッパ人に深い恨みを抱いているとのこと。ニュージーランドマオリ戦争の真っ最中だったのです。とうとう一行は捕らえられ、タウポ湖近くの部落に連れて行かれました。

 

人質交換によって助かる望みを失い、洞窟に閉じ込められ食人儀式が行われる中、間一髪で逃れた一同は海岸線で「ダンカン号」に偶然遭遇します。エアトンたち悪人に奪われたわけではなく、ちょっとした偶然からエアトンの悪事が発覚してエアトンは船室に閉じ込められていました。エアトンはグラント船長の船「ブリタニア」の乗員でしたが、船が難破する前に下船したためグラント船長の行方を知りませんでした。しかしイギリスの官憲に引き渡されるくらいなら、絶海の孤島に置き去りにして欲しいと申し出て、それが受け入れられました。

 

エアトンを置き去りにする島は南太平洋の孤島マリア・テレジア島(これだけが架空の島)と決まり、そこに近づくと人の気配がするので別の孤島を探すためここを立ち去ろうとしますが、夜、海上グラント船長の子供たちは父親の声を聞いたのです。なんとこのマリア・テレジア島(仏名タボル島)でグラント船長と二人の水夫は二年間の無人島生活を送っていたのです。めでたし、めでたし。でも長かった~
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エアトンはこの後、タボル島で12年間の囚虜生活を送り、「神秘の島」に登場します。12年目にやっと「ダンカン号」がエアトンを迎えに来て「神秘の島」の人たちとともに救助されましたが、無人島に罪人を置き去りにするという罰は実際にあったのでしょうね。

 

ジュール・ヴェルヌの漂流物、科学物の原点はエドガー・アラン・ポーらしいので、ポーの全集を読み始めています。