壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

二重標的 今野敏

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二重標的 今野敏
ハルキ文庫 2006年 680円

今野さんの「安積班シリーズ」第一作です。「隠蔽捜査」がヒットしてからこの文庫(ハルキ文庫というのを初めて見ました。)で刊行されていますが、もともとは1996年に書かれた警察小説ですから、「隠蔽捜査」の原型がここにあるようです。お台場にある通称「東京ベイエリア分署」はプレハブのような安普請の建物。「踊る大走査線」の「東京湾岸警察署」のモダンな建物とは大違いだけれど、所轄の刑事と本庁の刑事の対立や縦割りの警察組織などの要素がすでに織り込まれています。

正式名称「東京湾臨海署」の主な仕事は湾岸道路の取締りなので、署の花形は交通機動隊の方で刑事捜査課は近隣の所轄署の応援に借り出されるばかりです。形ばかりの捜査課長の下でベイエリア分署捜査課をしょって立つのは係長の安積警部補。仕事に打ち込むあまり奥さんに逃げられ、やっと成人した娘にもずっと会えないでいるわびしい一人暮らしです。刑事という仕事に高い誇りを持って部下を思いやるやさしさがあるけれど、本庁の刑事に嫌がらせされれば黙ってはいません。でも組織の中で生きていくことに耐えています。ミステリ部分はわりと平凡ですが、部下や同僚たちの個性も分りやすくて読みやすい一編でした。二時間サスペンスドラマになっていないのかしらん。

貰い物の本をたまたま読み始めたのですが、面白いシリーズのようです。1996年にはまだ「パソコン通信」だったし、お台場だって閑散としたものだったでしょう。私はお台場に行ったこともないのですが、このあとシリーズがどんなに動いていくのか興味があります。残念ながら「安積班シリーズ」の古いのが図書館にないみたいです(今野さんの著作が多すぎてさがせないのかも)。またいつか貰える日を待ちます^^。「隠蔽捜査3」も出ているらしいので、こちらは図書館にリクエストしておかなければ。