壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

姑獲鳥の夏 京極夏彦

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姑獲鳥の夏 京極夏彦
講談社文庫 1998年 800円

まったく初めての京極夏彦作品。読み始めるにあたって、これがデビュー作であり、京極堂シリーズの第一作であるらしいという知識しかありませんでした。今まで躊躇していたのは、本の厚さ以上にホラーなのかオカルトなのか正体が分らない(と思い込んでいた)ためでした。
ホラーは怖いし、オカルトは嫌いです。

読み終えてみれば、なんだ! ホラーでもオカルトでもなくていちおう本格ミステリじゃないですか。民俗学や心理学、脳科学に関する京極堂の薀蓄を聞かされている語り手(関口巽)の様子から、彼が『まったく信用できそうもない語り手』であることは物語の初めから明白なので、どんな仕掛けがあるのかと期待しました。ミステリ部分は期待ほどでもなく、まあこんなところかなという感じでした。

でも、そんなものが見えないなんてそれはないだろうとか、あまりに都合良過ぎではないかとか、そんなバカなとか、本格ミステリにつきまとう違和感は楽しめました。おどろおどろしい舞台装置もなかなかのもの。「骨壷に入れた干菓子」には笑いました。榎木津、木場などの探偵役の人物像も面白くて、最も楽しめたのは京極堂が語る薀蓄部分でした。
薀蓄は好きです。

次作「魍魎の匣」もそのうち読みましょう。