壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

海底密室 三雲岳斗

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海底密室 三雲岳斗
徳間デュアル文庫 2000年 762円

深海4000メートルにある実験施設での事件ということで、いちおう前の記事とは『深海つながり』です。 「M.G.H 楽園の鏡像」のシリーズということになるのでしょうか。鷲見崎(すみざき)という変わった苗字にかすかな記憶があります。

深海4000メートルに存在する、海底実験施設「バブル」。取材に訪れた鷲見崎遊は、そこで二週間前に、常駐スタッフが不審な死を遂げていたことを知る。自殺としてすでに処理されてしまったひとつの“死”。だが、それはひとつだけでは終わらなかった。連続して発生する怪死事件。完全に密閉された空間の中で、なにが起きているのか。携帯情報デバイスに宿る仮想人格とともに、事件の推理に乗りだす遊だったが…。

海上プラットフォームの下4000メートルの海底にある実験施設『バブル』内の鍵のかかった研究室でおきた殺人事件ということで、二重の密室になっています。場所が深海であるという必然性は、実験施設の構造と生活空間のメンテナンスに関わっています。その点は宇宙ステーションが舞台の「M.G.H」とよく似ています。

関係者全員が『バブル』内にいる研究者八人と二人の訪問者で、五人の女性研究者の区別がつきにくくて、困りました。語り手が人工知能であるというのは目新しいけれど、これもキャラが薄いです。ミステリ以上に深海ネタの薀蓄を楽しみました。

以下少しネタバレです・・・







倉庫内での第二の事件で沸点の差によるアレはわりと知られたことなので、ちょっと考えつきましたが、第三の事件の『○―○効果』というのはまったく知りませんでした。これがトリックとして妥当なのかどうかもまったく想像がつきません。

犯行の動機はびっくりするようなものではなく、いちばん驚いたのが御堂健人の関係者が現れたこと。いちばん知りたかったのは鷲見崎遊の過去の事件。これはまったく明らかにされていないので次回作があるということでしょう。もちろん期待していますが、探偵レオナルドのほうもよろしく^^。