壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

メチル水銀を水俣湾に流す 入口紀男

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メチル水銀水俣湾に流す 入口紀男
日本評論社 2008年 1900円

「水俣病の科学」では、水俣病発生から半世紀以上たって初めて、アセトアルデヒド製造過程で副次的に生じたメチル水銀水俣病の原因であることを科学的に証明した事が書かれていました。そこにも書かれていましたが、メチル水銀中毒が公式に発表されたのは1940年イギリスということになっていました。さらに当時、アセトアルデヒド製造過程でメチル水銀が生じることは科学的に証明されていなかったそうです。これが危険性を予見できなかったという企業側の言い訳になっていました。

ところが本書で明らかにされているのは、19世紀半ばにすでにメチル水銀中毒に関する報告があること、そして1921年にはアセトアルデヒド製造過程で有機水銀ができるということが発見され、JACS(アメリカ化学会誌)に発表されていたということでした。JACSは有名な雑誌であり、関係者が見逃すはずがないのではないかという主張です。

筆者は1947年水俣生まれ。そこで子供時代を過ごし、化学会社に勤めていた経験のある方です。子供のころにみた水俣の美しい風景と人々の暮らし、それに重ねて書かれた静かな告発が印象的です。