三冊目のこのシリーズもこれで終わりなんでしょうか。工学部助教授ではなくなった水柿君の不思議な日常は相も変わらず。小説ともエッセーともつかない虚実取り混ぜた不思議な作品ですが、軽妙や軽快とは違った「軽さ」をもつ語り口は、いったん乗ることができれば、読みやすくて最後まで一気にいってしまいました。
森さんではなくて、水柿君は大学を辞め、さらに今度はあっさりと小説をやめてしまったのですが、毎日退屈することもなく、須磨子さんと(別々に)楽しんでいるようです。無数の駄洒落のようなものは、百回に一回くらいは笑えるし、須磨子さんとの会話はたいてい面白く、須磨子さん自身はもっと面白い。
森さんのHPをのぞけば、なにやら進退伺いのようなものがあるけれど、十年ちょっとで数十冊を上梓したというのはすごいですね。稼ぎすぎなんでしょうか、解脱したくなったのでしょうか。森作品は、このシリーズ以外に三冊読んだけれど、自分はもう若くないなと感じさせる何かがあって、(若くないんだから当然だけれど)ちょっと敬遠。