『暁英』は英国人建築家ジョサイア・コンドルの雅号。お雇い外国人として25歳の時に来日し、鹿鳴館などを設計。河鍋暁斎に弟子入りして日本画を学び、日本文化を愛して生涯を日本ですごしたという、なかなか魅力的な人物です。その『暁英』の視点から明治初期の裏面史をひもといた、魅力的な歴史ミステリでした。北森さんの文章は緩急自在で、講談の語りのような独特なリズムですから、それに乗れさえすればスイスイ読み進めます。
読者にとって未完というのは残念な事ですが、歴史の謎をあれこれ考えて見るのは楽しみかもしれません。鹿鳴館が鹿鳴館外交はどのように西洋の猿真似といわれ悪評紛々になってしまったのか、昭和15年に鹿鳴館が取り壊されるまでのいきさつ、暁英が失脚した経緯は何か、河鍋暁斎との付き合いはこの後どう展開していくのか、コンドルが残した『河鍋暁斎伝』をますます読んでみたくなりました。