最近嵌っているコージー・ミステリは女性を読者対象にした物語です。この方面にのめり込んでもいけないので(←別にいけないことはない)バランスをとろうと、男性読者が多そうな椎名誠さんの最近作を読んでみました。今は無き国分寺書店を知っているので、『さらば国分寺書店のオババ』から何作かは読んだ覚えがあるのですが、あまりの多作と多動についていけず、ずっとご無沙汰していたシーナさんです。
昭和30年代。千葉の田舎町に住む小学校五年生の五人の少年の、一年間の物語。各章の題名になっている野草は、オニユラシ タマセンカズラ アレチノカヤツリ ナガバカソウ ウワバミソウ アワコガネギク スズメノテッポウ ハマボウフウ。でもはじめの四つは、いかにもありそうな名前ですが、俗名なのか、正式名称としては実在しない名前のようです。
夏休みには学校で禁止された川の上流を探検してあやしげな飛行研究家と出会い、自治消防団の兄貴たちに怪談で脅かされ、三分でできるチキンラーメンを初めて食べ、廃村で里芋を掘って食べ、捕ったザリガニを焼く。山にも川にも海にも生き物が満ち溢れている。近所の大人たちが、少年たちにきちんと向き合ってくれる。50代になった主人公たちの再会がまたいいんです。昭和レトロ版スタンドバイミーっていう感じです。