一人企画「新刊本を読む」は終了しました。図書館の新着図書コーナーで、一目見ただけで手当たりしだいに借りてきた残りの新刊本は、シリーズの途中だったり苦手なタイプの本だったりで、そのまま返却します。
私たち人間の知らないところで、異界が広がっている、それも日常生活のすぐ隣に。その感覚がホラーではなくて、ファンタジーとして語られています。それもずいぶんとノスタルジックに。無駄のない簡潔な文章が、頭の中に映像を呼び覚まします。「夜市」の開かれている森も、「風の古道」が続く武蔵野の雑木林も、子供のころに見た風景のようです。
半世紀以上前の夜店は照明が暗くて、千尋が迷い込んだ油屋のある町のような賑わいはありませんでした。屋台の置かれた神社の周りの森は暗く踏み込んではいけない場所のようでした。1960年前後の武蔵野の雑木林は、お寺の裏庭から細い踏み分け道が続き、ひょっこりと人家の裏手に出たりと、ここに書かれている風景そのもの。懐かしい~~
子供のころに「夜市」で売ってしまった弟を買い戻した後の展開が意外でしたし、小金井公園から続く「風の古道」に再び戻った主人公の少年の体験も不思議感たっぷり。でも『妖し』達が行きかう目に見えない街道を永久放浪者となって旅をするレンや、カズキのさらに先の物語はどう続くのでしょうか。なかなか妄想が湧いてきません。
この少年のように、桜の季節に公園で迷子になって「風の古道」をのぞいてみたいような・・。まあこの年齢になるとこの道を歩く『妖し』に近いけど、気分はあくまで少年のままで・・。