壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

クラバート

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クラバート プロイスラー
中村浩三訳 偕成社文庫1985年 上下各620円

年末掃除で外の物置に行って見つけてしまいました、子供たちがお気に入りだった、埃だらけの「クラバート」。埃を払ったついでに読みました。再読(再々読か)ですが、文句なく素晴らしい物語です!

三人の仲間と門付けをしながら村々を廻る孤児のクラバートは、ある夜に夢で名前を呼ばれます。その声に誘われるまま、シュヴァルツコルムの水車場で粉引き職人の見習いとして働き始めました。隻眼の親方はひどく恐ろしいけれど、そっと助けてくれる仲間ができました。

新月の夜11人の職人は、いつもは使わない石臼を動かし、怪しげな客のために粉袋を運びます。金曜の夜に行なわれる魔法の学校、親方の読む「魔法典」に聞き入る12羽のカラス、復活祭の前夜に行なわれる儀式、大晦日の夜に訪れる仲間の死、そして新年にまた入ってくる年若い見習い。

毎年繰り返される悪夢のような出来事は逃れられぬ運命なのでしょうか。復活祭の夜にクラバートは一人の少女に出会いました。でもこれまでに一人としてこの水車場から逃れた職人はいないのです。ついに親方はクラバートにある契約を迫るのですが・・・・・

スウエーデンの軍楽で兵隊たちを懲らしめる場面、あらしの夜親方と共に馬車でドレスデンザクセン選帝侯のもとに急ぐ場面、最後の親方の試練に立ち向かう場面にわくわく、ドキドキ、ホロリとさせられます。それほど長い話ではありませんが、なんともよみごたえのある物語です。

「ラウジッツ地方の伝説」をもとに、17世紀末から18世紀の東欧を舞台にして、大どろぼうホッツェンプロッツの作者でもあるプロイスラーが長編に作り上げたものです。物語の土臭い怪奇なテイストは東欧のものなんですね。「Krabat」で検索すると、2008年映画のtrailerに行き着きました。とうとうこれも映画になるのかあ。