歯で噛み砕いたキャラウェーシードの香りがずっと口中に残るような、豊かな味わいの余韻が残る九つの短編集です。素晴らしい作品ばかりで、感想が書けないので思い出すためのメモだけ。
停電の夜に/ロウソクの灯をはさんで語り合う夫婦・・その結末に・・
ピルザダさんが食事に来たころ/家族をダッカに残してきたピルサダさんの思い出・・少女の気持ち・・
病気の通訳/病院の通訳を副業とする観光ガイドが案内した夫婦・・ちょっと意訳・・
本物の門番/階段掃除のマーの財産は寝床にする敷物と鍵ひとつ・・社会の変化はここにも・・
セン夫人の家/セン夫人に預けられたエリオット少年・・少年は成長した・・
神の恵みの家/サンジーブは新妻トウィンクルのこだわりのなさに・・やれやれ・・
ビビ・ハルダーの治療/生まれて29年間病んでいたピピだったが・・なるほど・・
三度目で最後の大陸/カルカッタからの移民である男はインドから妻を迎える・・出合った老婦人は103歳・・
「セン夫人の家」、「三度目で最後の大陸」は、移民として暮らす人たちの不安と喜びの両方が読み取れて特に印象深い。どれも静かに心に染み入ってすこしばかりさざ波を立てる。
ラヒリ「その名にちなんで」も読みましょう。