壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

ローマ人の物語 1、2  ローマは一日にして成らず [上][下]

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ローマ人の物語 1、2  ローマは一日にして成らず [上][下]
塩野七生 新潮文庫 2002年 400円、438円

この本が刊行され始めたころは忙しくて、長丁場になりそうなものを読み始める決心がつかず、完結した時点で読み始めようと漠然と考えていました。この夏、文庫版の既刊28冊をまとめて借りることが出来ましたので、少しずつ読んでいくつもりです。

「なぜローマ人だけがあれほどの大を成すことができたのか」

第一章 ローマ誕生 前753~前509
イーリアス」に描かれたトロイの落人アエネアスの子孫がロムルスであるとするとき、離れすぎた年代の矛盾を埋めたのは、荒唐無稽な伝承伝説。

エトルリア人にとっては低すぎる丘であり、コリント人にとっては海に面していない土地であるため見向きもされなかったローマの地。エトルリア人とコリント人という二大勢力のはざ間にうまれた町で、ロムルスは国政を、王と元老院と市民集会の三本柱とした。

「サビーニ族の女たちの強奪」ののちサビーニ族との戦いに勝つが、敗者でさえも対等に同化する政策は、ローマの強大化に寄与した。以降も近隣部族のローマ移住を積極的に推奨していた。

ローマを強大にした要因は、宗教についての考え方にもあった。多神教では、人間の行いや倫理道徳を正す役割を神に求めない。一神教では、それこそが神の専売特許なのである。多神教の神々は、ギリシア神話に見られるように、人間並みの欠点をもつ。

ローマ人が神々に求めたものは守護(守り神)である。軍神マルス、農業の女神ケレスなど。しかしキリスト教一神教であるにもかかわらずユダヤ教よりは柔軟であり、守護聖人(守護神とは言えないので)を設けた。

人間の行動原則の正し手を、 宗教に求めたユダヤ人。 哲学に求めたギリシア人。 法律に求めたローマ人。法律は価値観の異なる人々にも効力を発揮する。

第二章 共和制ローマ 前509~前270年(ルビコン川以南のイタリアを統一)
共同体にとって、王政は初期のうちは中央集権的であるため効率が良かったが、ついにはその使命を終え、ルクレツィアの事件をきっかけに共和制に移行していった。元老院より選出された任期一年の執政官二人が終身任期の王の代わりとなった。非常事態に置く独裁官。平民の権利を守る護民官など。

法律の作製に当たっては、ギリシアに視察団を派遣していた。しかし、絶頂期のアテネやスパルタの模倣をしなかったのがローマである。

世襲であり、信義によって結ばれていた、クリエンテスとパトローネスというローマ独特の関係は、身内意識は強いが、閉鎖的な関係ではない。

前390年、ケルト人(ガリア人)による7ヶ月間のローマ占領(身代金によって解決した)以降、ローマの共和制も外交政策も充実していった。貴族と平民の垣根を取り払い政治的な要職を平民出身者にもすべて解放した。元老院も例に漏れず、ギリシアとは異なる政治体制を選んだ。

ケルト族襲来のとき機能しなかったラテン同盟をローマ連合に切り替え、敗者を隷属化するより共同経営者にした。「分割し、支配せよ」の考え方の誕生であった。前270年にルビコン川以南のイタリアを統一した。建国から500年たっていた。
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