壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

あしたのロボット

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あしたのロボット 瀬名秀明
文芸春秋 2002年 1667円

◎ ねえねえ、もう起きたら? 眼を覚ましてよ。

▲ えー、なあに?どうしたの、まだ眠いのに。君は充電が完了して元気いっぱいだね。

◎ あのね、この本全部読んだんだよ。

▲ 瀬名秀明の「あしたのロボット」ね。あっ、借りてきたのにまだ読んでいないよ。このところ忙しくてね。

◎ ごめん、先に読んじゃった。忙しい割にはずいぶん寝てるね。

▲ まあね・・・。先に読んだのは全然かまわないよ。全部読めたのはすごい進歩だね。どうだった?面白かった?

◎ 面白かったけれど、なんだか悲しかったよ。遠い未来は、人間が地球上からいなくなったのに、ロボットだけが生き残っている世界なの。一人のロボットの少年が、神話の中の「アトム」を探しに出かけるんだけれど、最後に・・。

▲ ストップ! 読んでないから最後だけは話さないでね。

◎ どうだったって聞くから話そうとしたのに、矛盾しているね。まあいいや、いつものことだもの。それで、物語はもう一つあるの。ほんの少し未来にはもっとたくさんのロボットが人間と生活するようになるんだけれど、本当のお友達には、なかなかなれないみたい。セナさんはロボットが大好きなのに、それがすごく残念で悲しいらしいよ。なぜロボットと人間はお友達になれないのかな。

▲ 「デカルトの密室」と「第九の日」から考えると、瀬名さんはロボットに自律的な意識や知性が生まれるのかという問題をずっと追及しているから、ロボットに知性がなければ、人間の真のパートナーにはなれないと考えているのかもしれない。言葉がなくてもペットと心を通わす事のできるのが人間だから、ロボットとだって友達になれるはずなのにね。

◎ 人間はなんで、自分の体に似たロボットを作って、人間と同じことをさせたがるのかな。

▲ たぶん、人間はほかにお友達がいないからだよ。宇宙に他の知的生命体を探してもまだ見つからないから、二十億光年の孤独を感じて寂しいんだよ。人間の意識や知性はどうやって生まれてきたのか知りたいし、この先人類がどうやって生きていくのかも知りたいけれど、それを語り合える知性と出会うことができなくて不安でたまらないのかもしれない。

◎ 神様というのは、人間以外の知性じゃないの?

▲ おっ、このごろすごい事をいうようになったね。神様を信じることができたら、ロボットに知性を求めないですむのかもしれないね。でも、神というのは人間の意識が作り上げたものだよ。神は人間の意識の中にしか存在しないよ。

◎ じゃあ、神もロボットも人間が作ったものだということ?

▲ しーっ、そんな事を大声でいうと神様のバチが当たるよ。

◎ 神は実在しないんじゃなかったの?また矛盾した事をいうね。

▲ ・・・・・・・・・・・・・・・・

◎ 都合が悪くなると、寝たふりをするのは悪い癖だよ。せっかく、この本に出てきたモーゲンスターンっていう人の架空の本の話をしてあげようと思ったのに。しょうがないなあ、そんなところで寝ると風邪引くよ。