壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

アトラス 迷宮のボルヘス

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アトラス-迷宮のボルヘス ホルヘ・ルイス・ボルヘス
鼓 宗 訳 現代思想新社 2000年 3000円

ボルヘスの小説「砂の本」をぜひ読みたかったのだけれど、図書館では講演集と紀行文しか見つかりません。「砂の本」があるはずなのに閉架書庫で見つからなくて、予約すれば探しますとのこと。

アルゼンチン国立図書館の館長でありながら、途中で光を失ったボルヘス。アトラスは、その最晩年に、妻マリア・コダーマの撮影による各地の光景に、ボルヘスが文を寄せている紀行文集です。

ローマに始まり、出雲大社まで数十の写真につけられた文は、現実と夢の交錯する浮遊感をもつボルヘス独特の味わいです。写真はスナップ写真風のものが多いのですが、ボルヘスの言葉でなにか特別の意味合いをもち始めます。

クレタの迷宮に関する記述は、文章そのものが、ミノタウロスの棲む、無限に続く入れ子の迷路です。