壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

真相 切り裂きジャックは誰なのか?

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真相 切り裂きジャックは誰なのか?(上下) パトリシア・コーンウェル
相原真理子訳 講談社文庫 2005年 800円 752円

翻訳されたパトリシア・コーンウェルの小説は、どれも読んでしまったので、残っていたのはこの「真相」。小説ではないし、実際に起きた犯罪を取り上げたものだから陰惨なはずで、ずっと読むのをためらっていました。しかし無聊の日々に、通りすがりの古本店で見つけ、中も見ずについ買ってしまいました。

100年以上も前の、劇場型犯罪の元祖といわれる切り裂きジャック事件は、いくら現代の科学の粋を集めても状況証拠でしか追うことはできませんでした。きっとこの時代にも模倣犯は存在したのでしょうね。DNA鑑定もほとんど役に立ちませんでした。

コーンウェル自身も書きたくないといっていたこの本は、作者のとり付かれたような執念の産物です。事件そのものの悲惨さも目を覆うばかりですが、被害者たち(ビクトリア朝時代に、ロンドンのイーストエンドで暮らす社会の最下層の人々)のあまりに酷い状況にも胸が痛みます。

コーンウェルに筆力があるだけに、最後の方は読むのがつらくなり、読んだのを後悔しました。