壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

サン・ジョバンニの道

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サン・ジョバンニの道 イタロ・カルヴィーノ
和田 忠彦訳 朝日新聞社 1999年 1700円

30年も前によく読んだイタロ・カルヴィーノの、未読の遺作集を見つけました。
表題の短編を読み始めたとたん、カルヴィーノがかつて生きていた1930年代のイタリアの美しい風景がよみがえります。イタリアに行ったこともない私にもなつかしさを感じさせるので、いままで見た事もないものを、なぜこんなに言葉だけで伝える事ができるのかと感動しました。訳文が自然です。しかし、カルヴィーノの死後、未完の作品をまとめて発行した短編ということで、最後はメモのようになっていましたが。

「ある戦闘の記憶」はパルチザンとして行軍したある朝の、鮮明ではあるけれど細部の記憶を語っています。カルヴィーノには、現実と空想のはざまで揺れ動く独特の感覚があるのです。