壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

感染爆発

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感染爆発 鳥インフルエンザの脅威 マイク・デイヴィス 2005年
柴田裕之 斉藤隆央訳 紀伊国屋書店2006年1680円

「インフルエンザがどういうもので、それがどう広まり、どんな被害を及ぼしてきたかを説明しながら、新しいインフルエンザウイルス亜型が異種間で急激に進化し、毒性を強め、世界的に伝播しやすくなった3つの原因を究明する。(MARCデータベース)」という内容です。

3つの原因というのは、あとがきにあったのですが、
コングロマリットが介在する家畜革命:工場のような大規模飼育施設の導入と飼育種の均一性
・世界を巡って人や物が高速に移動し接触するというグローバルな経済環境(特に中国の産業革命
第三世界の巨大な都市や貧困にともなうスラムの出現の3つでしょう。

著者が医学関係でなく社会批評家であるため、ストレートな社会批判が目新しく、よみごたえがありました。終章「酉年」には、ワクチンや抗ウイルス剤が世界の富裕層に独占され、ほとんど無防備な第三世界が、国際社会で無関心なまま放置されている事実が書かれていましたが、新年早々背筋が寒くなるような思いでした。

貧しい第三世界こそがこのウイルスの変異の温床であり、変異ウイルスの供給源ですから、これらの国の予防監視体制を強化しないと世界はたいへんなことになるのです。というか、もう手遅れなのでは?