法医昆虫学の話です。ミステリーにはよく出てくる話ですが、実際の事件に沿った話をよむのは初めてです。死体、それも非業の死を遂げた死体を虫たちがいかに食べつくすのかということですから、ミステリーで読みなれているとはいえ、想像力を働かさないようにして読みました。
気味の悪い部分とは別に、著者やその仲間たちが、法医昆虫学という新しい分野を切り開いていく過程はとても魅力的でした。食事をしながら腐乱死体の写真を眺める人たちの研究会はとてもブラックなユーモアがあります。このつらすぎる仕事をやり遂げるのにユーモアの要素が欠かせないと著者がいうように、何故かユーモアを感じさせるエピソードがいくつもあります。ハワイ島で日本人ゴルファーがプレー中に腐乱死体に出合った時に取った行動、腐乱死体を回収するために海兵隊員が用意してきた手袋の話などです。とても気味の悪い話なのに何故か笑ってしまいました。
クロバエは動物(人間も)の死体を10分くらいで見つけて卵を産み付けるという事ですが、いったいどんな化学物質のにおいを検知するのでしょうか。
パトリシア・コーンウェルの検屍官シリーズに「死体農場」があったのを思い出しました。最新巻は「神の手」だったけれど、また次が出ているかしら。シリーズの初めの頃に比べて面白みはなくなったけれど、つい惰性で読んでしまいます。