壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

可燃物  米澤穂信

可燃物  米澤穂信

文藝春秋  Audible 

お試し期間のAudible で聴いた8時間30分。活字で読めば半分以下の時間で読めるだろう。先が早く知りたくてKindleを探したが、まだ高いのであきらめて耳から聞いた。2倍速という手もあるが、耳からの情報処理能力が低いのであきらめた。等速で聴くと、耳からの読書に慣れてきて、ドラマを聴いているように映像が浮かんでくるようになった。

 

さすがのミステリランキング上位、とにかく面白い。群馬県警の葛警部という新キャラクターだそうだ。無口で上司にも部下にも煙たい存在だが、人間心理の機微を察知する能力に優れている。特に事件の目撃者、関係者への事情聴収で目覚ましい能力を発揮している。「崖の下」「ねむけ」「命の恩」「可燃物」「本物か」の切れ味のいい短編が5つ。ミステリとしてのトリックや謎は新奇というわけではないが、証言から人の心理や状況を読み取っていく所が新鮮だった。

それにしても、上司や他部署の人間に手柄を持って行かれている葛警部だが、手柄を譲ってもらった方の人間と葛は、この先どんな関係を作っていくのだろうか。続編を確信していろいろ想像してしまった。

 

耳からの情報は私の記憶に残りにくいような気がするが、考えてみれば目で読む本も読む端から忘れていくので、ブログに書き留めているのだった。耳からの読書は「読書」と言っていいのだろうか。読書メーターにもAudibleが掲載されているし、そういう時代になったのだろう。手書きから離れてキーボード入力するだけだと、漢字がだんだん書けなくなるが、文字に接する機会が減ると、漢字を読めなくなるということにはならないだろうか。