壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

青い壷  有吉佐和子

青い壷  有吉佐和子

文春文庫  電子書籍

50年近く前に書かれた小説なのに、なぜかとても面白い。ドラマ「大奥」→「皇女和宮」→「有吉佐和子」という連想でセール中の本書を読み始めたのだが、復刊後にベストセラー本になったというネット記事が出ていた。さもありなん。

無名の陶芸家が焼いた青磁の壷は、会心の出来だった。この青い壷がどうやってスペインに渡り、また日本に戻ってくるのか。買われ、贈られ、盗まれ、売られていくうちにも、その評価と値段がさまざまに見積もられていく。そして、その壷を手にしたさまざまな境遇の人々の話が13話ある。時代や世情は変わっても、人間の本質は変わらないのだと改めて納得した。

特に年配の女性の話には思い当たることが多くて、つい笑ってしまった。定年して居場所を失った夫とうんざりする妻、嫁いだ娘の遺産相続の愚痴を聞かされる母、目の不自由な姑を介護する嫁、子育てと介護を終えた後の喪失感、卒業後50年ぶりの同窓会など。先ごろの50年ぶりのZoom同窓会を思い出した。しわと白髪で相貌が変わっていても、個性は変わっていない(笑)。

下世話で俗な話なのに人間性が深く感じられて、有吉佐和子ってやっぱりすごい!