壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

批評理論入門 『フランケンシュタイン』解剖講義  廣野由美子

批評理論入門 『フランケンシュタイン』解剖講義  廣野由美子

中公新書 電子書籍

『フランケンシュタイン』を読み終わって,モヤモヤしている所でこの本を見つけた。小説の技法と批評理論を解説するために,実例として『フランケンシュタイン』を徹底的に解剖している。第一部「小説技巧篇」,第二部「批評理論篇」からなる。どちらもスッキリとわかりやすく,しかも整然と説明がされていて,こういう分野の学問があるという事さえ知らなかったド素人にも,とても分かりやすかった。

実例として,ほぼ『フランケンシュタイン』のみを取り上げていて,読んだばかりだったのに再読したような気がした。また,なんでこんな書き方なんだろうか,と疑問に思っていた点が丁寧に解説されていて,腑に落ちた。

第一部はデイヴィッド・ロッジの『小説の技巧』を原案としているとあった。(以前読もうとしたが難しそうだったので,替わりにロッジのコミックノベル『交換教授』を読んだ覚えがある。)「時間」「声」「語り手」「メタフィクション」など,なんとなく聞きかじりで使っていた言葉が,きちんと定義されていた。いい加減に使っていた自分が恥ずかしくなった。

第二部「批評理論」では,こんなにたくさんの小説の見方があることに驚いた。読書ブログを長い間書いていたのに,全く知らなかった自分に今さらびっくり。もちろん,ここで書評とか批評を書いているつもりは全くなく,ただの読書感想,ただの読書記録,呆け防止のための頭の体操ではあるが…。多様なものの見方があるという事は,文学に限らず大切なことだ。

でも,これからも,読みたい本を選ぶ基準は自分にとって「面白い」かどうかだけ。でも読んでみないと「面白いかどうか」なんてわからない。そして,目が悪くなって図書館の紙の本が読めなくなってからは,月980円の読み放題か半額のような安い電子書籍を選ぶことが多くなった。それもまたしょうがない事。