壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

コンビニ人間  村田沙耶香

コンビニ人間  村田沙耶香

文春文庫  大活字本(埼玉福祉会)図書館本

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もう何年も読もうと思っていた本をやっと読んだ。受賞後の図書館予約の長い列に並ぶ気になれずに忘れていたが,読みやすい大活字本を見つけ一晩で読み終えた。予想以上に面白かった。面白かったというより軽い衝撃を受けたというべきか。

 

コンビニバイト歴18年の古倉恵子さんは36歳でコンビニが生活のすべてといってもいい。コンビニの中――マニュアルのある世界――では,自分が社会という正常な世界から排除される「異物」ではないと感じられるのだ。子供の頃から「普通」ではない恵子は妹から「いつになったら治るの?」などと言われる。白羽というダメ男と形式的に同棲することで追及の手を逃れられるかと考えコンビニバイトを辞めたが…

 

自分の外の世界――世間とかいう「普通」――に対する違和感は,多かれ少なかれ誰もが持っているのではないか。みんな一生懸命になって「普通」にふるまっているのではないのだろうかと思うのだ。もともとずっと「普通」に生きている人もいるのだろう。ただ他人のことはよくわからない。私は「自分が「異物」かもしれない」と思う場面は70年生きてきた中でたびたびあった。私はたぶん「あちら側」に近い所にいるのかもしれない。アニメ「平成狸合戦ぽんぽこ」で狸たちが栄養ドリンクを飲んで人間に化け続けるように,私も体力がないと「普通の人間」に化けていられない。歳をとって,そろそろ化けの皮がはがれそうですわ。