壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

西洋博物学者列伝   ロバート・ハクスリー編著

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西洋博物学者列伝   ロバート・ハクスリー編著
植松靖夫訳 悠書館 2009年 9500円

図鑑サイズで多数の博物画が紹介されているので、ぱらぱらと眺めようと借りてきたのですが、「アリストテレスからダーウィンまで」39人の個性的な博物学者の伝記が面白くて、二週間ほどかけて通読しました。執筆陣はロンドン自然史博物館を中心とする世界の研究者や科学史家です。たくさんの著者による記述が全体として統一が取れていて、また読みやすい訳文でした。

博物画としても絵画としても見ごたえがあるのは、たとえばマリア・シビラ・メリアン、マーク・ケイツビー、ウィリアム・バートラム、そしてなんといってもジョン・ジェイムズ・オードゥボン。オードゥボンの「アメリカの鳥類」は実物を(複製でもいいので)是非みてみたいものです(→国際版画美術館)。

こういう本は手元に置いて時々眺めたいものですが、高価で手が出ません。しばらく図書館の棚に預けておきましょう(笑)。

日本の博物学者についてもそのうちに読みたいと思います。

********以下はメモ********

第1部 古代の博物学者/アリストテレス/テオフラストス/ペダニオス・ディオスコリデス/大プリニウス 
人間は古代から博物学的な興味をもってはいたが、自然の事物を実用面や利用目的ではなく、それが持つ形態によって分類しようとしたのがギリシャ人である。生物の世界の階層を構築したアリストテレスは最初の偉大な博物学者と位置づけられる。実用本位のローマ人は大プリニウスの「博物誌」が表すように、自然界を百科全書的に捉えていた。

第2部 ルネサンスレオンハルト・フックス/ウリッセ・アルドロヴァンディ/アンドレア・チェザルピーノ /ピエール・/コンラート・ゲスナー
ルネサンス期は古代文明の再発見により、動植物の精緻な描写と分類法が進歩し、世界各地での新たな発見によって自然界が拡大していったのに、いまだアリストテレスらの著書に束縛はされていた。アルドロヴァンディは自然の動植物を数多く文書に残すべく文献を多用したため、想像上の生き物も入り込んでしまった。

第3部 啓蒙主義の時代/ニコラウス・ステノ/ジョン・レイ/ロバート・フック/アントニ・ファン・レーウェンフック/サー・ハンス・スローン/マリア・シビラ・メリアン/マーク・ケイツビー/カール・/ビュフォン/ゲオルク・シュテラー/ミシェル・アダンソン/エラズマス・ダーウィン/ウィリアム・バートラム/ジョゼフ・バンクス/ヨハン・クリスチャン・ファブリシウス/ジェイムズ・ハットン/ジャン—バティスト・ラマルク/アントワーヌ—ローラン・ド・ジュシュー/ジョルジュ・キュヴィエ
世界を股にかけた探検と航海によって、また顕微鏡という新しい技術によって、さらに化石という形で、新たな未知の生物たちが数多く発見された時代である。蒐集と分類が盛んに行われ、体系的な分類法が模索された。

第4部 19世紀/ウィリアム・スミス/アレクサンダー・フォン・フンボルト/オードゥボン / ウィリアム・バックランド/チャールズ・ライエル/メアリ・アニング/リチャード・オーウェンジャン・ルイ・ロドルフ・アガシー/チャールズ・ダーウィン/アルフレッド・ラッセル・ウォレス/エイサ・グレイ
自然科学の台頭は、アマチュア博物学者を衰退させた。その最後の世代であった大探検家フンボルトは自然界の統一を夢見た。科学的な知識の流れが進化論の方向へ動いた時代であり、ダーウィンの進化論はその集大成であったかもしれない。ダーウィン以降、生物学も地質学もアマチュアが手の出せるものではなくなり、専門化が進んだ。


Carolina parakeets (Conuropsis carolinensis) by John James Audubon (1833) from Wikipedia
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