壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

雪沼とその周辺 堀江敏幸

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雪沼とその周辺 堀江敏幸
新潮社 2003年 1400円

「いつか王子駅で」でノスタルジーをかきたてられて以来、同様のものを求めてこの作家の作品を読んでいるのですが、あれは『都電』に対する個人的な思い入れに由来するものだったのかもしれません。

一つ一つは独立した短編ですが、互いにゆるく繫がっていて、町営スキー場をもつ「雪沼とその周辺」にすむ市井の人々を描いた連作短編となっています。一つの仕事に打ち込んで不器用に生きている人の、人生の隙間でふと出会う情感が、静かな語り口で巧みに表現されています。老いや別離や身体的不調といったものに共感はあるのですが、薄紙一枚向こうの気色のようでもあり、直接心に響いてこないのは、美文調の描写と説明的な文章に違和感があるからなのでしょうか。これは体調不良か、個人的好みの問題でしょうね。だって、この短編集は三つも文学賞を受賞しているそうですから^^。

スタンス・ドット・・小さなボーリング場のオーナー
イラクサの庭・・・・料理教室を営んでいた女性
河岸段丘・・・・・・製函工場主
送り火・・・・・・・書道教室の夫婦
レンガを積む・・・・レコード店
ラニア・・・・・・定食屋の店主
緩斜面・・・・・・・消火器販売会社社員