一つ一つは独立した短編ですが、互いにゆるく繫がっていて、町営スキー場をもつ「雪沼とその周辺」にすむ市井の人々を描いた連作短編となっています。一つの仕事に打ち込んで不器用に生きている人の、人生の隙間でふと出会う情感が、静かな語り口で巧みに表現されています。老いや別離や身体的不調といったものに共感はあるのですが、薄紙一枚向こうの気色のようでもあり、直接心に響いてこないのは、美文調の描写と説明的な文章に違和感があるからなのでしょうか。これは体調不良か、個人的好みの問題でしょうね。だって、この短編集は三つも文学賞を受賞しているそうですから^^。