壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

武装解除 -紛争屋が見た世界 伊勢﨑賢治

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武装解除 -紛争屋が見た世界 伊勢﨑賢治
講談社現代新書 2004年 740円

たまたま見た「爆笑問題のニッポンの教養」で面白そうだった「平和構築学」。残念ながら10分くらいしか見られませんでしたが、娘が面白いと教えてくれたのがこの本です。世界の紛争地域にNGOとして、また国連から派遣されて、敵対する武装勢力同士の間に入って兵士を武装解除させ、さらに兵士を文民としてコミュニティー社会に復帰させるまで(通称DDR:Disarmament, Demobilization and Reintegration)を果たすのが、伊勢﨑さんのような紛争屋です。戦争を始めるより、終わらせるほうが困難です。その困難な戦後処理を行うには、高度な専門性と経験が必要とされます。

とにかく面白い本でした。伊勢﨑さんという方は、東チモール暫定政府の県知事を務め、シエラレオネでは、NGOや国連の責任者として、また日本主導で行われたアフガニスタンDDRを指揮するなど、現地でひたすら実務に携わった話は迫力満点です。面白いのは伊勢崎さんの波乱にとんだ日常だけでなく、私が漠然と思い込んでいたこととは、まったく発想の違う世界の眺め方でした。日本のPKOはどうあるべきか、有効な国際援助とはなにか、平和憲法を持つことの意味など、ナルホドと納得することばかり。

“国際援助の世界では伝統的に小学校や病院などの癒し系インフラが、支援する国の興味を引きやすいが、まず優先的に必要なのは留置所や刑務所などの体制系インフラである”とか、”国際協力の世界では、金を出す者が一番偉い。それも、「お前の戦争に金だけは恵んでやるから、これだけはするな。それが守れない限り金はやらない」という姿勢を貫く時、金を出す者が一番強いのだが、日本はこれをやらなかった”とか、興味深い話がたくさんありました。「東チモール知事日記」という本があるそうです。ネット上でもここにあるのですが、そのうち本を読みたいと思います。