壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

結局、ウナギは食べていいのか問題  海部健三

結局、ウナギは食べていいのか問題  海部健三

岩波科学ライブラリー  図書館本

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私としては絶滅危惧種は食べないと決めています。食べないのは主に経済的理由ですが,環境意識で理論武装したい(笑)。うなぎの蒲焼は好きですが,生き物としてのウナギはもっと好きです。長い回遊と産卵の秘密と謎に満ちた生態をもつウナギを生き物として尊敬してしまうほどで,そんな生き物をうしなうのはさびしい。ニホンウナギの絶滅を防ぐ有効で現実的な手段があるのか知りたくて読んでみました。

 

有効な資源保全の取り組みは始まってはいるものの不十分で,効果を上げることができるかどうかもわからない。絶滅の可能性を考えるべきで,資源量などの科学的なデータも不十分で,なんと七割が違法に漁獲されたシラスウナギ,トレーサビリティがないため一杯500円のうな丼も一万円のうな重も密漁由来かどうか区別がつかないらしい。「保全のため食べない」「食べられるうちに食べたい」「食べていいものなら食べたい」「高いから食べない」「土用の丑の日には絶対うなぎ」「うなぎは嫌い」「うなぎで儲けたい」「うなぎで生活している」いろんな立場の人がいる中でどのようにバランスをとるのかは難しい。表紙に「そのモヤモヤにお答えします」とあるけれど,読後にさらにモヤモヤします。

 

 

 

 

以下は忘れないようにメモ

はじめに

「食べてよい」or「食べてはいけない」という結論は出さないと明言。ウナギの問題は,[環境問題や生物資源の持続的利用という]さまざまな問題において,シンボルの1つになる…

♪環境の問題というのは正解のない問題なので,まあ当たり前でしょうね。コロナ対策だって,今のところ正解があるわけではなく,試行錯誤の連続です。♪

 

1.ウナギは絶滅するのか 

ニホンウナギ絶滅危惧種(絶滅危惧IB種)になっているが,減少の正確なデータがない!でも8割くらい減少?保全の対策が遅れているのは事実。減少の原因は(1)過剰な漁獲,(2)生育場環境の劣化,(3)海洋環境の変化。長距離の回遊と限定された産卵場を考えると,個体数がある限界を超えて減少すれば一気に絶滅の危険が高まる。

♪絶滅すれば取り返しがつかないし,ニホンウナギといっても日本人のものではない。♪

 

2.土用の丑の日とウナギ

丑の日に食べるのは,平賀源内のせい。年間8千万匹のニホンウナギが消費されている。日本の文化としてうなぎを食べ続けるためには,ウナギの再生産速度とのバランスをとる必要がある。今のシラスウナギの漁獲制限は上限が過剰に設定されていて,事実上取り放題。

♪丑の日のうなぎは,バレンタインのチョコレートと同じような事。バレンタインチョコレートも日本の文化?♪

 

3.ウナギと違法行為 密漁・密売・密輸

国内で養殖されているニホンウナギのうち,およそ半分から7割程度が違法に流通したシラスウナギに由来する。違法行為は,反社会勢力だけでなくごく普通の業者が密漁・密売・密輸に関与している。違法行為が横行することで漁獲高などの正確な科学的データが得られないため,資源管理が難しくなる。違法行為を処罰するにも,シラスウナギが非常に高価であるため,現在の罰金は低すぎて効果がなく,違法行為が発覚する確率を高くしないと現実的でない。違法行為摘発のためには電子データが必要。

♪もしも,ウナギが絶滅し始めたら又は絶滅したら真っ先に困るのはウナギ業者だと思うのですがね。水産庁がもっと本腰を入れないと。♪

 

4.完全養殖ですべては解決するのか

研究室の完全養殖シラスウナギは,高価すぎて商業的な養殖には使えない。将来,商業ベースに乗るような価格で完全養殖できたとしても,天然シラスウナギの漁獲制限を厳密にしないと,消費が上乗せで増えてしまう恐れがある。

♪完全養殖うなぎも食べたい!って,日本人はどんだけうなぎ好きなんだよ!♪

 

5.ウナギがすくすく育つ環境とは

産卵場から川に戻るウナギは,かつて親の住んでいた川に戻るわけではなく,海流にのって広く分布するので,狭い範囲での保全は効果が薄い。ウナギの遡上と降河を妨げるような河川工作物のほうがより大きな問題で石倉カゴ(河床に積んだ石組みのウナギの寝床?)の設置は根本的解決にはならない。

♪石倉カゴはウナギ保護のためというより,ウナギ漁のために都合がいいんだそうです,なるほどね♪

 

6.放流すればウナギが増えるのか

養殖ウナギを川に放流する目的の1つは組合の漁業権の確保,つまり漁獲高が少なすぎると漁業権が維持できないから。もう一つは保全のためだが,放流でウナギが増えるという科学的根拠はない。養殖ウナギを自然に放流することで川全体の生態系を乱し,養殖ウナギ(大半がオス)を放流することが性比の偏りを生んでいる。

♪子供たちにウナギの放流を手伝わせる「善意の放流」が実は…「地獄への道は善意で舗装されている The road to hell is paved with good intentions.」ということわざを初めて聞きました♪

 

7.ワシントン条約はウナギを守れるか

ニホンウナギの取り引きは今のところ(2019年)ワシントン条約の規制対象ではなく,今後規制対象となっても,過剰な漁獲のうちの国際取引がかかわる部分のみ。

♪危機的状況があるとわかっていても,規制がかからない日本のうなぎ消費!♪

 

8.消費者にできること

行政は少しずつ動き出しているが,政治の世界ではウナギ問題は優先順位が低い。一人一人の消費者ができることは「ウナギ保護」の声をあげ,「より適切な商品を選択する」こと。ウナギ保護を謳っている企業にはいろいろあるらしく,見せかけの保護に気をつけよ。

♪具体的に企業名を挙げているが,私はうなぎを買わないので…パス。♪

 

あとがき 

♪ウナギ研究と産業界の癒着とか,著者がいろいろな方面から「これ以上ウナギ業界に不利な内容を話さないように」「学会への出入りを禁止する」と言われたとか,ウナギの謎以上に,ウナギ業界の闇は深い。♪