本が読めない状況が続き、持ち歩いた「万物理論」がすっかり手摺れてしまいました。図書館の本なのにゴメンナサイ。たぶん読めないとわかっていても、つい本を持ち歩いてしまいます。返却期限を過ぎてやっと読了です。すこし落ち着いたので、読書習慣もブログもぼちぼち復活する予定。
「ガリレオの指」からの連想で読み始めたこの本は、私にとって初「イーガン」です。こういうハードSFは好きですが、文庫本で600ページあり、少しずつ読むには不適です。できたら一気に読みたかった。
2055年、映像ジャーナリストのワースは、南太平洋の人工島ステートレスで開催される理論物理学会で、万物理論(TOE)を発表する女性物理学者でノーベル章受賞者のモサラを取材する事になった。ステートレスには、TOEの完成を阻止しようとするカルト集団が集結し、世界にはDistressという謎の伝染病が広がっていた。
映像ジャーナリストのワースは視神経タップと腸内メモリーとへそポートを装備していて、自らが録画する機械目撃者となって死者の記憶を取り出す手術を取材するところから始まるのですが、アイデアに満ちたディテールの豊富さに驚かされます。
行き過ぎたバイオテクノロジー(ATGC以外のDNA言語に自らの体を作り変えた大富豪)、七つのジェンダーが存在する社会(その一つが汎性で、代名詞はheでもsheでもなくve)、バイオテクノロジーによって成長するサンゴ礁の島ステートレス。
ラマント野(つい本当かと思って調べてしまった!)の切除手術を願う人々、温暖化難民、テクノ解放主義(科学は万人のものであるからと、遺伝子特許などを否定する)、反科学的カルト集団と伝統復興運動、ステートレスの特許侵害を制裁しようとする国際社会。
そしてTOEは世界を救う(実際に研究されている万物理論TOEは、すべての自然法則の根底にあると仮定される理論というだけですが)。Distressという謎の伝染病とTOEの関係。イーガンの自己言及的な宇宙観。