「コルシア書店の仲間たち」
ミラノの小さな書店コルシア・デイ・セルヴィは、カトリック左派運動の共同体でもありました。著者のミラノでの生活は、カトリシズムという土台の上で、この書店を中心にまわっていたようです。この書店に出入りする、実にさまざまな人物の思い出からなる短編集です。
テレーサおばさんは大資本家の令嬢で、この書店のパトロンの一人。ダヴィデ・マリア・トゥロルド神父は、政治活動を行なって教会から追放処分された。由緒ある家柄の出であるフェデリーチ夫人のサロンでかわされる文学談義。娘自慢の弁護士カッツァーニガ氏の客間の壁にあった、二枚のジョルジョ・モランディーの静物画。
ユダヤ人の父親をもち、ヒットラー似のドイツ人と結婚したニコレッタ。十歳でアフリカから連れてこられ、読み書きのできないミケーレ。「ミラノ霧の風景」にも登場した編集者のガッティには40歳も年の離れた妹ができた。
ミラノの小さな書店コルシア・デイ・セルヴィは、カトリック左派運動の共同体でもありました。著者のミラノでの生活は、カトリシズムという土台の上で、この書店を中心にまわっていたようです。この書店に出入りする、実にさまざまな人物の思い出からなる短編集です。
テレーサおばさんは大資本家の令嬢で、この書店のパトロンの一人。ダヴィデ・マリア・トゥロルド神父は、政治活動を行なって教会から追放処分された。由緒ある家柄の出であるフェデリーチ夫人のサロンでかわされる文学談義。娘自慢の弁護士カッツァーニガ氏の客間の壁にあった、二枚のジョルジョ・モランディーの静物画。
ユダヤ人の父親をもち、ヒットラー似のドイツ人と結婚したニコレッタ。十歳でアフリカから連れてこられ、読み書きのできないミケーレ。「ミラノ霧の風景」にも登場した編集者のガッティには40歳も年の離れた妹ができた。
多様な背景を持つ人物が、色も太さも手触りもちがう縦糸であれば、須賀敦子さん自身は、目立たないけれど細くて勁い横糸でしょうか。そんな縦糸と横糸で丁寧に手織りされた、織物のような短編集が「コルシア書店の仲間たち」です。夫が亡くなったときのことさえ言葉すくなに語るのみですが、遠い異国での著者の生活と友人たちのとの交流は、読むものの心に響いてきます。