キャシーが一人称で語り続ける物語に、最初の章からすっかり引き込まれてしまいました。流れるように続く文章は翻訳なのか疑うくらい滑らかで、しかし違和感のある言葉は確かに浮き上がって感じられます。
かすかに違和感のある言葉から、その世界がどんなに異様であるか少しずつ想像はつくのです。しかし、この物語を読み進めるのは、霧につつまれた、薄い氷に覆われた湖面を、静かに一歩ずつ歩いていくような感じがします。進むのが怖いようですが、立ち止まる事もかないません。
やっとのことで、でも一日で、読み終わったとき、切ないとか、悲しいとかそんなやわなものでなく、魂を揺さぶられるような思いで、呆然としてしまいました。内容を未読の人に語るべきではありません。でも、ミステリーの要素が主題ではありませんから、もう一度読みたくなるでしょう。でも今すぐには無理です。心が疲れてしまいました。