白水Uブックスを探していて「コルシア書店の仲間たち」という題名に惹かれ、「読書力」で紹介されていた「ヴェネツィアの宿」からたどり着いた須賀敦子さんのエッセーです。分類番号019のコーナーの本で、図書館のこのコーナーを眺めるのが習慣になってしまいました。
塩一トンというのは、著者のイタリア人の姑のたとえで「人を理解するのには塩一トンを舐めつくすくらいの長い時間がかかる」という言葉に由来するそうです。ゆっくりと時間をかけて、いろいろな作品を読み、心から本を愛している人の書くエッセーに引き込まれました。
取り上げられている本は読んだことのないものばかりでした。ベルヌの「海底二万里」と谷崎「細雪」だけは既読でしたが、「細雪」に関しては、本の冒頭にあったように「すじ」だけを追って読んでしまったのかもしれません。この評論をよんで「すじ」をわずかに思い出しました。たぶん十代の終わりに読んでいて、古い本の表紙と本の手触りを覚えていますが、本を読んだときの感情を記憶していません。
「細雪」を再読する気にはなれませんが、若いころ(十代、二十代)に読んだ本で、また読んで見たいものをいくつか思い出しました。谷崎繋がりで、読むのを中断せざるを得なかった本を思い出してしまいました。三島由紀夫「豊饒の海」です。あの事件の日「奔馬」を読んでいました。あれからもうだいぶたっているので、そろそろ続きを読んでもいいかなと思います。