壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

Y染色体からみた日本人

イメージ 1

Y染色体からみた日本人 中越 豊
岩波科学ライブラリー 2005年 1200円

サイクスの「アダムの呪い」を読んで、日本人のY染色体はどうなっているのか知りたいと思っていました。著者がこの本の執筆を計画していた段階で「アダムの呪い」が出版されたそうです。世界的にY染色体が注目された時代でした。Natureの特集を眺めた(読んでない)ような記憶があります。

「アダムの呪い」は扱っている事実はとても面白かったのですが、その書き方がエキセントリック過ぎて、8割がた読んだだけです。この本の前書きで、「サイクスのは侵略するY染色体の話だが、ここで書くのは、つつましくお行儀のよい染色体の話である。」とあったので期待して読み始めました。サイクスのような、有名な家系(マクドーネルだったか)のY染色体のタイピングをするというような研究は、現在の日本でできるはずもないですが。

Y染色体ハプロタイプで分類する世界標準によれば、日本人のY染色体は約10タイプになり、大きく分ければ、縄文系(東アジアにまれなタイプ)と弥生系(中国大陸に起源を持つタイプ)、その他、になるそうです。地域集団におけるY染色体タイプの割合に、地域差もしくは東西勾配があるのかどうかは、よくわかりませんでした。サンプリングにバイアスがかかるのではということです。

このサンプルは環境ホルモン問題が盛んなりしころ、日本人の精子濃度が低下しているかどうかを調査した時に、Y染色体をタイピングしたもので、サンプル数が少なかったようです。血液サンプルならもっと多数のサンプルが、統計的に扱えたのにと思います。

Y染色体のタイプごとの二世代での増減を表したグラフ(図14)は、第三世代目のY染色体のタイピングを行なって、家系図から計算したということかしら。でもなぜ有効数字が9桁なの? まあそれはともかく、精子生産に概年リズムがあるとしたら面白い。縄文人弥生人がどのように出会って、折り合っていたのか、将来、科学的に証明される日が来るといいです。

有史以降、外からの侵略がなかったことは、日本人のY染色体のタイプからも明らかで、「砂漠の暴力」(梅棹忠夫「文明の生態史観」)を受けなかったことが、日本独特の文化と風土を作ったということでしょうか。人類最古の家系の話は・・・・・・・・。人類の歴史と性淘汰の問題は面白いので、詳しい本を探しましょう。ドーキンス「祖先の物語」にも繰り返し強調されていました。

読みやすく、100ページちょっとなので、二時間くらいで読んでしまいました。このごろ読書ペースが速めです。100冊を過ぎてから、ちょっと1000冊を意識したせいかもしれません。たぶん三日で忘れるでしょうが。岩波科学ライブラリーには他にも面白いものがありそうです。要チェック。