壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

フルハウス 生命の全容

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フルハウス 生命の全容―四割打者の絶滅と進化の逆説 
Full House :The Spread of Excellence from Plato to Darwin
ティーヴン・ジェイ・グールド (著), Stephen Jay Gould (原著)
渡辺 政隆 (翻訳) 早川書房1998年

数年前(2002年)スティーヴン・ジェイ・ グールドが60歳で亡くなった時、もう一度著作をチェックしようと思いつつ今になってしまいました。
グールドの本はどれも長いものが多いのですが、この本は簡単に読めてしかもおもしろいのです。以前に読んだときには、生物進化の方向性に関して、”大リーグにおける四割打者の絶滅”のアナロジーしか記憶に無かったのですが、他の例として、グールド自身の中皮腫の生存期間のメジアンが八ヶ月であることに対する前向きな考察を見つけました。

彼の死亡原因は、この本にある中皮腫で、生存期間メジアンの数十倍は長寿でしたから、グールドの予想はまさに正しかったというわけです。(つまりあるガンにおける診断からの生存期間は、統計的に正規分布にはならず、生存期間ゼロという壁がある以上、生存期間が非常に長いものが存在する歪んだ分布になるだろうということ)。

進化の方向性が複雑化にあるのでなく、あまりに単純だと生命を維持できないという壁があるから、一見複雑化しているように見えるということを、すんなり納得できます。

グールドの最初の著作「ワンダフルライフ」はまだ読んでいないので、探してきましょう。パンダの親指は文庫版を持っているので、そのうち再読予定。