壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

迷路の始まり ラストライン3 堂場瞬一

迷路の始まり ラストライン3 堂場瞬一

文春文庫  電子書籍

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ラストライン3作目です。

岩倉の所属する南太田署管内で起きた殺人事件は,最初通り魔ではないかと思われたが,目黒区で起きた全く別の殺人とつながりがあることを岩倉が探り出した。色めき立つ特捜本部に水を差す岩倉は捜査から外されたが,フリーになったことを好機と考えて一人で捜査を続け,ついに闇の犯罪組織にたどり着く。

 

1人の捜査は周りから見れば暴走ととらえられるかもしれないが,岩倉にとっては必然の行動です。最後に岩倉に命の危険があったのですが,(シリーズだしね~と大した心配もせず), 犯罪組織の実態は闇のままです。岩倉は闇の事件の解決をライフワークにしたいみたいですが,海外に行くのかな~?ポジティブな岩倉です。「歩くデータベース岩倉」としては,未解決事件の本を書く話をどうする?

 

今回は息抜きと暇つぶしのための読書なので(もちろん,いつもそうだけれどね),読んでいる間は夢中なのですが,シリーズをぶっ続けに3作目まで読み終わって,すこし飽きました。このシリーズをこのまま続けて読むつもりはないけれど,4作目は探しておこうとしているうちに,他のシリーズとのコラボで『時効の果て』がその前にはさまっているらしい。「警視庁追跡捜査係」というシリーズは把握してなかった。で4作目は『骨を追え』。もうーややこしやぁ。

 

「ラストライン」を探しているうちに,テレ東でドラマ化されていて岩倉の恋人である舞台女優役が芦名星さんであることを知り,ショックです。大好きな女優さんでした。

割れた誇り ラストライン2 堂場瞬一

割れた誇り ラストライン2 堂場瞬一

文春文庫  電子書籍

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シリーズ2作目です。

「事件を呼ぶ刑事」岩倉剛は,定年まであと9年になった。かつて相棒だった新人の伊東彩香は機動捜査隊に移動になり,次の相棒・川嶋は岩倉を執拗にマークしているようだ。隣の北太田署で逮捕した殺人事件の容疑者田岡が裁判で無罪となり,南太田署管内の実家に帰ってきた。しかし周囲の人たちは田岡の無実を信じず,岩倉は次の事件が起きるのではないかと心配している。真犯人は誰なのか? 川嶋は何をしているのか?

 

今回の殺人事件も(ミステリー小説としては)ごく普通?の事件です。事件の真相を追う岩倉の語りで時間通りに進行するので,とても読みやすい。犯人は意外といえば意外だが…いやいや,想定の範囲内です。

 

事件関係は割と平凡なので,岩倉刑事の印象を少し。

岩倉は大学教授である妻と別居中とはいえ,娘が高校を卒業したら離婚することが決まっていて娘とはうまくやっているし,20歳も年下の舞台女優を恋人にもっている。50代で離婚寸前の刑事というのは他のミステリーでもよく出てきて,たいていはさびしい思いをかかえているものだが(?),岩倉は一人暮らしを満喫していて,全然寂しくなさそう。出世も手柄も望んでいないし,定年になったら未解決事件を集めた本を書くのを目標にしていて,うらやましいくらいポジティブ。

唯一の悩みといえば,人一倍の記憶力の源がどこにあるのかサイバー犯罪対策課の実験材料にされそうになっていて,その裏には脳科学者である妻の存在があるらしい。相棒であるはずの川嶋はどうも岩倉を探っているようなのだが,若い恋人との関係を知られたくないこと。 

このシリーズ,岩倉がどんな風になっていくのか,順風満帆にはいかないのではないかと (←シャーデンフロイデ

ラストライン 堂場瞬一

ラストライン 堂場瞬一

文春文庫  電子書籍

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定年まであと10年のベテラン刑事・岩倉剛が本部から所轄に移ってきた。新人の女性刑事・伊東彩香を相棒にして,鋭い人間観察と驚くべき記憶力を駆使して,一人暮らしの老人が殺害された事件と若い新聞記者の自殺という関連のなさそうな事件から,かつて世間を騒がせた大事件の闇を暴く。

 

堂場瞬一の警察小説で,定番なんですが面白い。新しいシリーズの第一作なので,読んだかどうかを心配せずに楽しみました。多作のミステリー作家の作品で,特にシリーズ物はどれを読んだのか把握しきれなくて混乱します。既読の堂場瞬一の本はすべて,ミステリー好きだった亡父からの貰い物でした。自分の読書メーターで調べると,シリーズの途中を何冊か読んでいました。

 「刑事の挑戦・一之瀬拓真」第3作

「刑事・鳴沢了」第1作,第2作

「警視庁失踪課・高城賢吾」第9作

「アナザーフェイス(大友鉄)」第4作

「警視庁犯罪被害者支援課」これは読んでいないと思うが,わからない。

TVの二時間ドラマの原作になっているものもあるかもしれないし,もうごちゃごちゃ。

幾つかのシリーズはあるときにクロスオーバーしていて,これは読者として知っているべき人物じゃないか?などと,余計な心配しつつ読むのも…まあ楽しいかな? 

 

50%のポイントディスカウントでまとめ買いをしたシリーズを,飽きるまでもう少し読みます。歳をとって読書スピードがすっかり落ちてしまったので,この本のように1~2日で読み終える本が今はうれしい。

一度きりの大泉の話 萩尾望都 / 少年の名はジルベール 竹宮恵子

一度きりの大泉の話 萩尾望都 

河出書房新社 電子書籍

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少年の名はジルベール 竹宮恵子

小学館文庫 電子書籍

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というネットの記事を読んで,この二冊の本を読みました。少女マンガは萩尾望都のSF作品を少し読んだ事があって,ちょっとだけファンです。竹宮恵子の作品の名前は知っていますが読んでいません。やじうま根性丸出しです。

竹宮恵子萩尾望都やその他の少女マンガ家たちが,50年ほど前に練馬区で共同生活を送り,いろいろ行き違い(?)があって決別し,その後50年近く関係が修復できていないというような話です。二人がそれぞれに語る出来事はそれほど矛盾しているわけではありませんが,事実の捉え方や気持ちは人ぞれぞれです。どちらも20代前半の若い女性たちで,同じ職業を目指していたわけですから,いろいろなことがあるのは当然です。

お互いに悪意が無くても,ある人が他の人にした行為が,したほうはそれほどのことではないと思っても,されたほうは深く傷つくことはよくある事です。それは一方的なものではなく,両方からの可能性もあるでしょう。50年たってそれほどのことではないと考える人もいれば,記憶にふたをするしかない程に深く傷ついている場合もあります。50年という年月だけでは消せない事もあると思います。

 

ところで,今月の下旬に卒業後50年近くたつクラス会があります。もちろんオンラインクラス会です。誰が言い出したのか,数十年ぶりなんですが,ちょっと気が重くて,なぜかな?と思っていました。 

そうだ!これだ! なんでこんなに長くクラス会をしていなかったのか? 何か自分の記憶に蓋をしていることはないのか? たぶん何にもないと思うけど… ちょっと怖くて,出欠の返信メールをまだ出していません。

猫は知っていた 二木悦子

猫は知っていた 二木悦子

講談社文庫  電子書籍

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二木悦子のミステリーデビュー作で,1957年の第3回江戸川乱歩賞受賞作ということですから,なんと64年前の作品です。映画やテレビにもなったようで,社会状況や生活環境の違いを差し引いても,コージーミステリとして十分に鑑賞できるロングセラーです。当時,このようなソフトでライトなミステリーは本当に新鮮だったのでしょう。

 

せっかく電子書籍になっているので,ALEXAで「睡眠読書」を試みました。二木兄弟が,事件の舞台となった箱崎医院にたどり着いた辺りで寝付き,そのまま5~6時間ほど朗読を聞きながら熟睡しました。加齢ゆえの睡眠障害でいつもは眠りが浅いのですが,なぜか合成音声の音でよく眠れます。朝6時過ぎに目が覚めかけ,半分寝ぼけて,犯人の殺害動機の告白を聞きました(あーあ)。もちろんもう一度,字を読みました。

ロボット・イン・ザ・スクール  デボラ インストール

ロボット・イン・ザ・スクール  デボラ インストール

松原葉子訳 小学館文庫

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タングの三作目です。ベンとエミリーの四歳の娘ボニーがプレスクールに通い始めました。当然タングも「僕も学校に行きたい!」。ロボットが学校に通うなんて許可が下りず,通学できなくてベンが奮闘する話なのかと思っていたら,ちがう,すんなり入学できました。二人とも学校ではいろいろありますが,高い共感性をもつタングはクラスにすんなりなじんだようです。ボニーの方はいろいろ問題が…。度胸の据わったボニーが頼もしい。

 

三作目になると,子供たち(人間もロボットも)の可愛さよりも,子供たちが学校に通うようになって,ベンとエミリーの親としての自覚が一層問われる場面が増えてきました。ベンもだいぶ成長したようで,子供たちへ戸惑いながらもちゃんと対応できるようになりました。エイミーの仕事のついでに家族で東京に一か月滞在して,日本文化に驚く外国人「あるある」も出てきて,これは英国よりも日本でヒットしたことへのサービスでしょうか。最後の最後で,ベンはジャスミンの突然の○○にはパニくってしまいましたが,そこまで大人の対応はできないよね。突然の別れに家族全員がうなだれて帰国すると,新たな展開が… 第四作に続く…よね。

 

学校で飼っていたナナフシを休暇中に預かったことで大変なことが起こりました。ナナフシがイボタノキの葉しか食べないなんて知らなかった。食草探しが大変だったことを思い出しました。

30年以上前に,小学校低学年の娘が夏休み前に教室で飼っていたカイコの幼虫を数十匹,持って帰ってきたときにはビビりました。昆虫が怖いわけではないけれど,毎日桑の葉をやりフンの掃除をするのはなかなかの作業でした。夏休みの最後にはカイコの体色が半透明になり蛹化が始まったので,急いでボール紙で細かい枠をたくさん作り,繭になったカイコを休み明けに学校に返しました。楽しかったなあ。

親も子供によって新しい体験をするのです。

赤い猫 二木悦子

赤い猫 二木悦子

講談社文庫  電子書籍

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二木悦子の後期の短編が6編。前半3編がアームチェアディテクティブ,中3編が二木兄弟シリーズで昭和50年代に書かれたもの。昭和の香りのコージーミステリと言ったらいいのでしょうか,殺人事件を扱いながらも話の展開は柔らかくて,でもけして単調ではないどんでん返しがあったりします。ほとんどが会話で進行する話や,探偵役が一人語りする筋なので読みやすいし,嫌なことが起こりそうもない,心配せずに楽しめるミステリーでした。寝る前読書にピッタリ。

 

あの頃の二木悦子の活躍はよく知っていましたが,ミステリーを読んだのはたぶん初めてです。二時間ドラマになっていたのは見たことがあるのかもしれません。電子書籍のバーゲンセール(?)で,二木悦子のミステリーデビュー作も見つけたので読みます。

 

『赤い猫』 車いすの老婦人が18年前の事件を解き明かす

『白い部屋』 怪我で入院中の私立探偵三影潤が数か月前の事件を解き明かす

『青い香炉』 植物学者二木雄太郎が解く○○殺人。嵐の山荘に閉じ込められて…密室殺人じゃない…

『子をとろ子とろ』 ピアノ教師浅田悦子が解く,子供たちが怖がる「子とろ女」のかなしい過去

『うさぎさんは病気』 ピアノ教師浅田悦子が解く,女の子の超能力?

『乳色の朝』 新聞記者吉村駿作が解く誘拐事件