壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

悪魔の種子 内田康夫

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悪魔の種子 内田康夫
幻冬舎 2005年 1700円

浅見光彦99番目の事件。(99ってすごいけど、きっと半分ぐらいは読んでます)

花粉症緩和米は遺伝子組み換え食品なのか医薬品なのか、そのビジネス化を巡って、秋田と茨城の二件の殺人が起きる。

西馬音内盆踊りのあやしい頭巾姿で現れたのは被害者、冒頭から旅情たっぷりです。さらに花粉症緩和米という時事問題を絡めた社会派風、最後は中越地震の場面で締めくくるという巧者ぶりでした。例によってミステリ的トリックも何もなく、ただひたすら浅見光彦のフットワークの軽さと勘の鋭さによってのみ物語が進行します。何も推理しなくていいので、頭を空っぽにできる時間消化型読書が、今の私には最適。

あとがきによれば、雑誌「家の光」に2004年から二年間連載したもので、花粉症緩和米も中越地震も連載途中で急遽テーマとして取り上げたものだとか。連載っていうのは、書きながら自在にプロットを変えていくのかと驚きました。それでも最後まで破綻なく一定のトーンで書かれていることに感心します。