壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

果断 隠蔽捜査2 今野敏

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果断 隠蔽捜査2 今野敏
新潮社 2007年 1500円

「隠蔽捜査」の続編です。あまりに面白いので、久しぶりに一日に二冊読んじゃいました。これはミステリ部分も工夫があって楽しめました。

竜崎伸也は警察庁から警視庁への降格人事となったのですが、といっても大森署の署長です。キャリア警察官が署長になれば、それは単なるお飾りであるというのが周囲の見方です。落成式や懇談会に出て、後は書類に判子を押すばかりの仕事。でもそこは竜崎です。落成式に出られない法的根拠を示し、教育防犯懇談会ではいつもの正論でうるさい親や教師をやりこめるあたりはとても滑稽でいいですね。

大森署管内で立てこもり事件が起き、警視庁からSIT、警察庁からSATが出動する事態となりました。現場の前線本部で指揮を取ることになった竜崎は、人質救出のために果断な行動を取りました。そこが事件後に問題になるわけですが、肝の据わった責任の取り方をする男です。しかし個人的なトラブルを抱えていました。

妻が救急車で入院してしまい、家に帰っても食べるものがなく風呂を沸かすことさえできないという情けなさ。でも憎めないのは、前作同様家族の危機に直面したときに、竜崎が一生懸命家族を思いやる気持ちがあることです。また立てこもり事件で、本庁の監察官に糾弾されても、やはり大森署員のことを思いやって、最後まであきらめないと決意した竜崎は、人間的にもずいぶんと学んだようです。

息子が将来の道を父親竜崎に説明するために、アニメのDVDを見てくれるように頼むシーンがあるのですが、なんと「○○○○」でした。このアニメに竜崎が感激してしまうところも滑稽なんですが、堅物の竜崎があまり柔らかくなると、次回作の面白みが減るのではないかと心配です^^。